133.最後の密会


深夜。ヨツバと密会中。


ネルとマック君が、店を手伝いたいと言ってきたことをヨツバに話した。ヨツバも了承した。

ただネルは宿が、マック君は実験や城での錬金術指導の仕事がある。

なので、適当な空き時間に商品作成を手伝ってもらう程度のことしか頼めないだろう。

何を手伝ってもらうかは、またゆっくり考えるとしよう。


さて、と俺はヨツバに話を切り出す。


『そろそろ俺のサポートはいいだろう。

夜遅くに会うと翌日眠くて仕方が無い。

密会は今夜限りで終わりにするぞ』と書く。


『はい。ですが店のこともありますし、定期的に連絡し合うために、交換日記をしましょう』と氷ブロック。



なるほど。

それならお互いの都合をあまり考えずに済むな。


俺は植物紙で作られた白紙の本を取り出す。

市場で購入したものだ。



『これを使うぞ』と書く。

本に“ヨツバ用交換日記”と書く。

四次元空間に仕舞っておくとしよう。



『ところで猫さん、試してみたい実験があります。

【四次元空間】同士の引き渡しです』



ふうむ?


ヨツバが試してみたいこととは、自分の【四次元空間】から他人の【四次元空間】へ直接物を送り込めるかどうかの実験。


試してみる。

俺の串肉をヨツバに送るイメージで【四次元空間】を使用だ。


ヨツバが串肉を取り出す。上手くいったみたいだ。


続いてヨツバからの贈り物を受け取るかどうかのメッセージが現れた。受け取ると念じたら、氷の塊が送られた。

俺は氷の塊を取り出す。

成功だ。


続いて距離。

宿から出て実験してみる。


結果、ヨツバから俺に送ることが出来るのは500mくらいまで。

俺からヨツバは、少なくとも3kmは大丈夫っぽい。


これなら、ヨツバと離れていても、交換日記を送ったりすればやりとりが可能だ。


俺は宿に戻ると、ヨツバが店の様子を見に行こうと言って(氷ブロックで書いて)きた。


ヨツバを背中に固定し、俺は夜の町を走る。


そして、店に入ろうとして、俺が付けた錠に阻まれた。

念動力で開ける。


【ライト】で照らすと、店には商品が残ってなかった。

いや、よく見ると薬は全然減っていなかったが、それ以外は無くなっていた。



「猫の旦那、ヨツバお姉さま!」



リオン君は起きていたみたいだった。

……お姉さまって何だ。


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