128.気持ち悪ーい
今は昼飯時。宿の食堂でヨツバはおかゆもどきを食べていた。
ナンシーさんが食べさせている。
ネルはお客さん用のスープを作っていた。
といっても、予めナンシーさんが切った野菜と肉を鍋に入れて煮込むだけの作業だ。
踏み台に乗り、鍋をゆっくりとかき混ぜている。
まだ包丁を触らせるのは危ないのだろう。
俺としては火や鍋を任せるのも怖いのだが。
そんな俺の心配をよそに、完成したスープをよそおい、調味料を入れて味付けし、黒パンを添えてお客さんへ持っていく。
「どーぞ!」
「おお、ネルちゃんありがとう!」
「どーぞ!」
「ふむ、悪いね」
「どーぞ!」
「ありがとう」
客に昼食を配り終え、火の始末をする。
俺は自分で焼いた肉の串があるから要らないと、あらかじめネルには言っている。
こうして見ると、ネルがナンシーさんの代わりに厨房に立つ日も遠くないのかもしれないな。
◇ ◇ ◇ ◇
「ニコ、部屋の外の男の人は彼氏?」
「ん? 違うよ。ボクの護衛らしい。」
ネルの質問に、マック君は平然と答える。
まだ脈なしかぁ。
「それにしても、ボクをストーカーしてる物好きが居るとはね。
猫さんも見るかい? ストーカーが送って来たとかいう手紙」
俺はマック君が見せたその手紙を見て、硬直する。
何せその手紙、俺が兵士君に送った物だったからな。
「あーあ。人に監視されるってのは気分が悪いものだね。
猫さんもそう思うだろう?」
ここで俺がその手紙の書き主だ、といって誤解を解くのはたやすいことだ。
だが……あえてバラさずにおこうと思う。
なにせ、マック君と兵士君が近づくチャンスだ。
二人のために、あえて俺がストーカーという汚れ役を被るのも一興だろう。
「ストーカー? 気持ち悪ーい」
ネルの容赦ない一言が俺に突き刺さる。
いや、俺はマック君のストーカーじゃないぞ。
……しばらく待って進展が無ければ素直に謝るか。
それまでに成果を出したまえ兵士君。
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