115.窮屈な法律だなそれは。王様に文句言ってやる。


翌日。例のごとく宿屋に着く。



「あら猫さん、いらっしゃい」



外の作業から戻って来たナンシーさんが扉を開けてくれたので、宿に入る。


……ん? ネルは?



「ネルは風邪で寝込んでるのよ。そっとしておいてあげてね」



そうか。寝込んでるのか。

一応【鑑定】で様子見しておくか。



◇ ◇ ◇ ◇



ネルの風邪はライノウイルスによる普通の風邪だった。

念のため【ヒール】をかけてやったから大丈夫だろう。


元気になった本人は遊びたがっていたがナンシーさんに止められた。

仕方ないから、『明日も来るよ』と書いて見せたら喜んでくれた。


俺は管理人室で、ヨツバと居ることにした。

マック君がヨツバの面倒を見ているらしいが……椅子に座って寝てやがる。

後で怒られても知らんぞ。



「ねこあん」



ヨツバがとてとてとやってきて、俺に紙束を渡す。

紙と鉛筆もどきをヨツバにも与えているのだ。


紙束に書かれた文章は日本語で書かれているから、他の人には変ならくがきか暗号文しか見えないだろう。


どれどれ。



『猫さんへ。私はお金稼ぎしたいです。商売でがっぽり稼げたらいいなと思っています。

以下のリストに挙げた物について、おおまかな値段や希少価値を、横に記入お願いします。

無ければ?と書いてください。


砂糖

コショウ

石鹸

糞尿肥料

火薬

じゃがいも

お酒

マヨネーズ

……』



数十種類あるリストに値段や?を記載し、渡してやる。

ヨツバはそれを見て、軽く考えた後、こう答えた。



「あぅう、ういまうう」



俺は首をかしげる。

ヨツバは紙に鉛筆もどきで書く。



『砂糖、売りましょう。

サトウキビかテンサイ、ハチミツの大量生産で稼ぎますよ』と。


俺は『ハチミツは砂糖じゃねえぞ』と書いた。

果糖とブドウ糖の混ぜ物であり、ショ糖(砂糖)の割合は少ない。


ヨツバは『細かい男は嫌われますよ』と返事を書く。



「うぅ~ん、あれ、猫さん。ボクは寝ていたのか」



マック君が起きたようだ。

俺は『砂糖の原料の植物知ってる? 大量生産したいんだが』と書く。


マック君は顔を歪め、言う。



「駄目だよ猫さん。それは貴族が管理している植物だ。

砂糖の原料を勝手に栽培したら犯罪者だよ」



え、そうなのか。


『デザートアプルは?』と書く。


「駄目。勝手に栽培してるのを見つかったら、まず良くて奴隷落ち。

最悪一族縛り首」



ひぇぇ。デザートアプルをまだ取りださなくて良かった。

というか、窮屈な法律だなそれは。


だいたい、デザートアプルの甘さは果糖によるものであって、砂糖ではない。

この世界の連中は区別が付いてないのだろうけど。


俺は今晩、王様に会いに行くことにした。

ちょっと文句言ってやる。




□□□□□□□□□□□


□後書き□


分かりにくいので補足。

砂糖の譲渡はOKです。

栽培と販売は許可が必要です。

勝手に行って奴隷落ちになるのは栽培のみです。

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