107.逆恨み
アウレネとともに、俺はエルフ達の様子を見に来た。
彼らは、俺の自宅から少し歩いた所に、竹で簡易テントの骨組みを作っていた。
「アウレネさんに肉球魔王様! どうされましたか?
我々に何か用ですか?」
「にゃんこさん、お願いします~」
「にゃー(そいっ)」
俺は、ハイ・オークとその仲間の死体を取り出す。
朝、アウレネに昨日の獲物を見せると、エルフの皆さんに見てもらいましょ~と言ったのだ。
エルフ達はざわめく。
「こ、このオーク達は?!」
「こいつらが、あなた達の集落を襲撃したというのは間違いないです~?」
「はい。しかし、いったいどこでこの豚どもを始末したのです?」
アウレネがこっちを向いたので、答えてやることにした。
『森に居たぞ』と書く。
「何だと?! 尾行されていたのか……」
「いや、臭いだろう。奴ら鼻が利くからなぁ」
「にゃんこさん、全滅させましたか~?」
『数体逃げた』と書く。
「なるほど。ならば、新魔王は再び森に軍を送ってくるでしょうね~」
どうやら俺の倒した豚顔魔獣は新魔王軍の部隊だったらしい。
逃がした魔獣が森のことを報告すれば、新魔王は復讐しに来るだろうとアウレネは言う。
だが聞けば、豚顔魔獣はエルフ達を襲おうとしていたらしいじゃないか。
討伐したからと言って恨むのは、逆恨みじゃないだろうか。
とはいえ、アウレネが言うような、復讐しに軍をこちらに向けるということ、すぐには起こらないだろう。
まずはこの森に偵察を送ってくるはずだ。
よほど短気で馬鹿な奴でない限り。
◇ ◇ ◇ ◇
・新魔王視点
「ぐおおおおおお! 許さん!
許さんぞクソがああああああ!」
余はオークの持ち込んだ悲報を聞き、怒りで思わず拳を机に叩きつけた。
机は真っ二つになるがどうでもいい。
あのハイ・オークは余が大切に世話した奴だったというのに!
くそ! くそ!
「ブホホ(我々の力不足だお! 魔王様に恥をかかせたこの首、捧げるお!)」
「違う! 許さんのは、余の大事な配下を殺した金眼夜叉という魔獣だあああああ!」
余の角が怒りで赤くなる。
「魔王軍を全員集めろおおおおお!」
余の命令を聞き、オークはすぐに兵を集めるために走って行った。
10分後。
「グルルルル!(魔王様、出陣の準備整いました!)」
ブラッドパンサーが報告に来る。
総勢500体の余の兵が、城の外に整列している。
「グルル……(しかし、本気で森にこの全勢力を投入するつもりで……?)」
「余を舐めたことを後悔させてやるううううううう!」
余は最強の魔王だああああ!
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