95.チートなんてしちゃいけません
俺はヨツバと会話することにした。
ヨツバは文字盤を、俺は木の板に日本語を書いて応答する。
『このまえはたすかりました。ありがとうございます』
『元気になってよかったな。
ああ、俺はトミタ、3年前に女神様に転生してもらったんだ』と書く。
『めがみ? はーでぃす、ほんにんに?』
『そうだ』と書く。
『わたしは、はーでぃすのぶかにてんせいしてもらった、よつばともうします』
『そうか。ところで、あまり話す時間ないんじゃないか?
ナンシーさんが昼寝している今くらいしか機会が無いが』と書く。
『よる、ねしずまったころにこっそりきてもらえたらはなせるようにな』
「私も、ヨツバと遊ぶー!」
会話に、ネルが乱入してきた。
『ナンシーさんが起きるだろ、静かに』と書く。
「はーい。私もお絵かきして、ヨツバに見せてあげるね」
ネルに鉛筆もどきと木の板を渡す。
俺とヨツバは会話再開だ。
『じゃ、夜に定期的に話してやるよ。聞きたいことは他にあるか?』と書く。
『ねこさんのちーとをおしえてください』
チート? チートって何だ。
日本語訳するとだます、不正をして欺く、とかロクな意味じゃないんだが。
英語で分かりにくいって奴は、チーティングが、日本語のカンニングに相当すると考えるといい。
カンニングが、高校生ならテスト0点&親呼び出し、国立大学だとテスト0点&留年確定ということを考慮すると、よっぽど悪いことだって分かってもらえるだろう。
『わたしは、もらったちーとでせかいをかえたいのです』
ヨツバはとんでもないことを言っている、いや、指し示している。
『悪いことを行うというのは、見過ごせないな』と書く。
この転生者、放っておくと犯罪に走りそうだ。
人生の先輩である俺が止めなければ。
『わるいこと? しょうせつではふつうですが?』
『それはあくまでフィクションの話だろう。実際に行うのは罪だ。
若いうちから悪いことをすると、ロクな大人にならないぞ。
チートなんてしちゃいけません』と書く。
『ちーとは、はんざいじゃないのでは?』
……ん? 何か話が食い違ってないか?
俺達は数十分話し合い、どうやら互いに勘違いしていたことに気付いた。
ヨツバの言うチートなるものは、神様などから与えられた凄い能力を指すらしい。
……いや、それチートじゃないから。
英語でそれを言うならギフトだろ。
そりゃ、
と言うかもしれないが、自分からチートです、と言うのはおかしい。
が、ヨツバの読んでいた小説では、それが普通らしい。
というか、最近の中学高校大学生が言うチートというのは、ヨツバが言うようなのを指すものらしい。
分からん……最近の若者は分からん……。
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