81.ネル、姉になる03
よし、赤ちゃんの頭が出た!
そして赤ちゃんが回転しながら出てくるのを、助産師さんがそっと支える。
「うえええええん!」
「産まれました! 元気な女の子ですよ!」
助産師さんはそっと赤髪の赤ちゃんを布の上に置き、へその緒を2ヶ所結んで、その間をナイフで切る。
そして、慣れた手つきで赤ちゃんを拭き、ナンシーさんの枕元へ置く。
「ふふ、よろしくね」
「えええええん!」
皆、ほっと一息ついている。
俺と助産師以外は。
そう、まだ終わりじゃない。
胎盤がちゃんと出るまでが出産だ。
この時に子宮脱などを起こしたり、大出血したりもする恐れがあるのだ。
最後まで気を抜くことは許されない。
赤ちゃんのチアノーゼの有無などを見つつ、ナンシーさんに気を配る。
10分後、胎盤が無事に出て、今度こそほっとする。
って、おい!
赤ちゃんの足をまっすぐになるように布で巻くのをやめろ!
股関節脱臼になるだろうが!
俺はマック君に、止めさせるように書いた。
すぐに布はほどかれる。
やれやれ。
赤ちゃんは布を敷いたカゴの中に入れられ、体に柔らかくて軽い布が被せられる。
その途中で俺と目が合う。
いや、赤ん坊はまだ目がちゃんと見えないはず。
気のせいだろう、うん。
「産まれたって本当ですか?!」
「ナンシーさん、大丈夫かぇ?!」
「赤ん坊はどこじゃ?!」
出産を聞きつけた近所のジジババが駆けつけてきた。
騒がしい。
案の定、助産師にうるさいと怒られて、しょんぼりして帰って行った。
ナンシーさんは疲れて眠ったようだ。
助産師は今日一晩付きそうらしい。
「わーい、赤ちゃんだー」
ネルがツンツンと赤ん坊のほっぺを触る。
赤ん坊がネルの指の方を向き、指に吸いつく。
「ネルちゃんはお姉さんになったのよ。
この子をちゃーんと守ってあげてね」
「うん!」
そんな微笑ましい様子を、俺とマック君は何も言わず眺めていた。
この日、ネルは姉になった。
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