74.白内障


翌日。

町に入った俺は、まず猫の集会に向かう。



「にゃー(猫又様ー!)」


「にゃー(猫又様ー!)」


「にゃー(猫又様ー!)」



俺が来たら、猫達が寄って来た。

鼻をくっ付けてくるのは挨拶だ。

おしりの臭いをかがれるのは嫌だから避けているけどな。


おっと。

目に涙を浮かべている猫がいる。

水晶体が濁ってないか?

白内障だろうか。


とにかく鑑定だ鑑定。

目の前の猫の目の病気は?


――――――――――――――――――――――――

鑑定結果

白内障

説明:水晶体が白濁する疾患。

――――――――――――――――――――――――


ビンゴ。


さっそくヒールをかけてやる。


ヒールは、病態が分かっている者が使うと100%近くの確率で治療出来るらしい。

医者が覚えたら最強だろうな。

そういえば王城にいた医務官もレッサーヒールを使っていたな。



「にゃー(おおっ! 目が治った!

ありがとうございます猫又様!)」



その後、他の猫達の健康に異常がなさそうなのを確かめて、俺は宿屋に向かうのだった。



◇ ◇ ◇ ◇



宿屋のマック君の部屋にて、俺は二人に『何か暇つぶしに良さそうな趣味はないか?』と聞く。


マック君は最近は変装していない。

秘蔵していた技術を全部国に流したから、もう狙われることはないとか。



「猫さん! そういうことなら、ボク以外にも国王の錬金術師達に、その偉大な知識を伝授して欲しい!」



ふむ、教育か。

そうすると、彼らは化学の知識が無いから、基礎から教えないと駄目だな。


マック君ほどの人物ですら、まともに化学が分かるまで3年かかった。

それも俺から見たら、かなり初歩のレベルだ。

だというのに、他の連中に教えるなんて、途方もない時間と手間がかかるぞ。



「猫さんの知識のおかげで、ボクは【変性錬成】と【分離錬成】のスキルを手に入れたんだ!

本当ならあと30年は修行する必要があったはずだけど、どうやら化学の知識がスキル習得を早めたらしい。

是非とも他の錬金術師の連中にも教えてやって欲しい!」



俺じゃなくても、マック君が教えてやればいいだろと伝えると、マック君は自分の研究で忙しいらしい。


なら本でも書けと伝えると、そんな時間も金も無いらしい。

この世界、印刷技術は全然無くて、本は全て手書きだという。


要するに、印刷技術、未熟ということか。


マック君の話を聞いて、俺は思いついた。

ならば印刷技術を広めてやろう。

タイプライターを作ってもらうのだ。



「猫さんとニコが難しい話してるよー」



ネルはムンクの叫びみたいに、口を縦長に開けてほっぺたに両手を当てていた。

何やってんだ。

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