58.今日のスープは塩辛い
おはよう。
昨日はネルと一緒にベッドで寝た。
俺はベッドから降りる。
ベッドではネルが寝ている。
まだ朝日も昇っていない。
起こす時間には早いな。
俺は部屋から出て行き、ジャンプでドアを開けて宿を出て、町の土場でトイレを済ませ、宿へ戻る。
「あら、おはよう猫さん」
宿に帰る途中でナンシーさんに会う。
彼女は水汲みをしていたらしく、水入りの壺を抱えている。
「今日は生肉を切らしていたわね。
ネルにお使いの練習させようかしら」
ネルは4歳くらいだろ?
お使いは早くないか?
あと2、3年くらい必要だと思うけどなぁ。
「ところで猫の肉ってどんな味がするのかしら、うふふ」
ぶるるるる!
俺は本能的に毛を逆立てて警戒する。
「あら? 猫さんったら、まるで私の言ってることが分かるみたい。
ふふ、ネルがおもちゃにするのも分かるわね」
俺はおもちゃにされてるのだろうか。
そうは思わないけどな。
「もうすぐあの子を起こすから、あなたもいらっしゃい」
俺はナンシーさんに続いて宿に入った。
◇ ◇ ◇ ◇
ネルをナンシーさんが起こし、朝食の時間となる。
ナンシーさんがスープを作り、宿屋のカウンターの鐘を鳴らす。
宿に泊まっていた人達が起きてくる。
「おはようございます。ネルちゃんもおはよう」
「おはようございますっ!」
ネルは笑顔で接客する。
年配の男性客は笑顔でネルにお小遣いの銅貨を数枚渡す。
これで好きなおやつでも買いなさい、と。
「まぁお客様、ありがとうございます」
「いえいえ。
せがれも大きくなったというのに、未だに未婚でしてね。
早くネルちゃんみたいな孫が欲しいものだ」
ネルは俺のところにやってくる。
「後で猫さんにおやつ買ってあげるね!」
良い子だ。
だがそのお金はネルが貰ったものだ。
ネルが使うべきだろう。
「ネル、おやつを買うのもいいけど、お使いを頼まれてくれないかしら?」
言いつつナンシーさんは銀貨を数枚渡す。
銀貨分だけ鳥肉を買ってこいと言う。
「はーい! 猫さん、ついてきてね!」
鳥肉くらいなら分けてやってもいいが、ネルのお使いの練習がメインなのだろう。
無粋な邪魔はするまい。
ネルはスープとパンの朝食を食べる。
俺はスープをもらう。
スープに使っている塩と香辛料はスープの皿に後から追加しているらしい。
なるほど、この町の塩と香辛料は高価だからな。
スープが余ると、それだけ損をする。
ナンシーさんなりの節約術なのだろう。
おかげで俺に出されるスープは塩も香辛料も入っていない。
……はずだったが、今日は干し肉のスープだ。
げほっ、げほっ。
干し肉からしみ出たのか、ちょっと塩味がきついぞ。
猫は塩味に鈍感なはずなのに、どうして俺が塩味を感じるのかは分からないが。
皆の目を盗んで四次元空間にスープを入れて皿を空にする。
ごめんなさいナンシーさん。
朝食が終わったら、いよいよネルの初めてのお使いだ。
きちんと見届けなければ。
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