46.墓前野宿



俺とアウレネは、再び自宅が見える茂みに隠れて様子見をしている。



「補給部隊、ただいま到着しました!」


「おせーぞ! こっちは腹ペコで死にそうだ!」



大量の荷物を背負った人間達が、見張りの兵士達の元へ到着したみたいだ。

食料を供給するための人員だろう。

森は馬車なんか通れないくらい悪路だからな。


俺の家の周りに張っている兵士は、俺の倉庫の備蓄には手を出していないらしい。

毒を警戒しているのだろうか。

それにしては、さっき渡した肉をそのまま持って行って食ったが、空腹には逆らえなかったということか。



「何か変わった様子は有りませんでしたか?」


「いや? 平和すぎて怖いくらいだ」



それから彼らは飲み食いし、騒いでいた。

もう辺りはすっかり暗闇だ。


彼らは火を焚いて、その周りで見張りをしている。

ライトの魔法は使えないのだろうか?



「にゃんこさん、これからどうしますか~?」


『どうする、とは?』と書く。


「その1、あいつらを皆殺しにして家を奪還します~。

その2、あいつらを全員眠らせて捕縛して家を奪還します~。

その3、今日はとりあえずどこか別の場所で野宿します~」


『その3で』と書く。


「合点承知です~」



俺達は茂みから離れることにした。



◇ ◇ ◇ ◇



月(?)明かりを頼りに、俺達は森を歩き、やがて野宿に良さげな場所を見つけた。


……古竜フランベルの墓前である。



「ここにしましょ~」



よりにもよってここかよ!

たたられるぞ!


この世界はファンタジーっぽいから、当然幽霊の類も居るものだと、俺は考えている。


俺はフランベルの墓をちらりと見る。

そこには、先ほどは見なかった文字が墓の前に書かれていた。

『次は魔石が食いたい』と。



「にゃー!(で、出たー!)」


「にゃんこさん、どうしました~?」


『幽霊が魔石を要求してきた!』と書く。


「幽霊? 魔石? 何のことです~?」



俺は墓前の文字を指差そうとしたら、いつの間にか文字は消えていた。

まるで伝えることはもう伝えた、と言わんばかりに。


ひぇぇ。

俺、絶対幽霊にマークされてるぞ。



「にゃんこさんは怖がりです~。

それよりも、明りをください~。

ここに簡易の寝床を作りますよ~」



俺はライトの魔法を使う。

アウレネが作業に夢中になっている間に、俺はバジリスクの魔石をお供えする。


魔石は消えた。

そして『憑代となる人形を頼む。礼は弾む』という文字が新たに現れる。


えーと、憑代となる人形、ねぇ。

多分この幽霊はフランベルジュさんだから、竜の形の人形だよな?


俺は四次元空間からミスリル鉱石の混じった巨大な岩を取り出す。



「わ?! にゃんこさん、どうしたんですか、そのキラキラした岩!」



アウレネの話を無視し、岩を爪で削る。


3時間ほどかけて、竜の石像が完成する。



「にゃんこさーん、2人分のベッドが完成しましたよ~」



アウレネが寝床を完成させたらしい。

竹をツタで結んで作った簡易ベッドだ。


俺は石像をお供えする。

ついでにイノシシもどき肉の串を数本お供えする。


幽霊さん、これで満足か?

どうか祟りだけはご勘弁願いたい。


ビクビクしながら、俺は簡易ベッドで寝る。

おやすみなさい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る