19.襲撃



・勇者の高無勇視点



ようやく俺達は外の森で訓練することを許された。


俺は高無勇たかなしゆう

チート能力【聖剣Lv30】を持つ。

手から光の剣を取り出すことが出来るのだ。


魔王だか何だが知らないが、俺の能力でコテンパンにしてやる。

もちろん途中でハーレム作ってウハウハするけどな!



「何をニヤニヤしてんのよ、気持ち悪い」



この茶髪の女は安沢宮あんざわみや

チート能力は【気配探知Lv20】


顔は良いくせに口の悪い、非常に残念な女だ。

俺になびいていない時点で残念なのは間違いない。



「……二人ともうるさい」



こちらの白髪の小さい男は神取秀吾かとりしゅうご

何を考えているのか分からない男だ。

チート能力は【催眠魔法Lv25】

もちろん俺には通用しなかった。

勇者様だからな。


この戦闘に役立たずの能力を持つ2人と一緒に、森の探索を任された俺の気持ちを考えてくれよ。


こいつら2人は雑魚だ。勇者にふさわしくない。

とっとと死ねばいいのに。


ん、どうやら森の奥に来たらしい。



「今回は森の薬草を20本採るだけだから、さっさと終わらせましょう」


「雑魚のくせに仕切るんじゃねーよ」



何故森の奥に来ているかというと、浅い場所の薬草は冒険者に採りつくされているからだ。

無計画すぎるだろ。

馬鹿丸出しだな。



「あーあ、バジリスクが生きていれば俺が華麗に狩って、町の英雄になったってのによ」



言いつつ襲いかかって来たイノシシもどきを狩る。

後ろ二人は本当に役に立たない。

サポート寄りのチート能力を持ってるくせに、俺のサポートをしない。

無能すぎる。



「今回の課題は討伐じゃないのよ。

無駄に森の魔獣を狩ったら生態系が壊れるわよ」


「知るかよ。

俺に指図するなエセ勇者が」



こんな奴らと同類に扱われているのが本当に腹が立つ。

俺はもっと大役を任されるべきなのに。


早く魔王討伐を……え?


俺の胸から矢が生えている?



「あら~? 勇者って思ったほど強くないんですね~」



女の声がした。

100mほど向こうから近づいてくる。



「バジリスクを倒したのは、勇者じゃなかったんでしょうか~?」


「誰よ?!」


「……くっ、催眠魔法が通じない」



現れたのは、長い耳を生やした金髪のエルフ。

そいつが他の2人にも矢を放つ。



「まあいいです~、国王さんに勇者の死体をお土産として持って行きましょ~。

魔王様の宣伝にもってこいです~」



こいつは魔王の配下か。

俺が気付かない場所から矢を撃つなんて、なんて卑劣な女なんだ。


矢を撃たれた場所からの出血が止まらない。

俺以外の2人は既に気絶している。

俺も長くはもたない。



「さて、全員抱えるのは重いので、首だけ切り取ることにしましょ~」



女が俺達へ近付いてくる。


もう駄目か。意識が遠のく。



「にゃー《『闇を照らせ。ライトニング』》」



◇ ◇ ◇ ◇



・勇者の高無勇視点



城の医務室で目が覚めた。


医務官と思しき人物は解毒魔法を懸命に唱え、俺が目を覚ますと解毒薬とポーションを飲ませてくれた。


あの2人も、俺と同じくポーションを飲んでいた。



「……あの女はどうした?」



俺は医務官に聞く。



「いったいどなたの話で?」


「俺達を襲撃した、凄腕の金髪エルフだ。

おそらく魔王の配下だろう」


「何と?! 魔王の配下と交戦されたのですか?!」



医務官の話によると、俺達は医務室に突然現れたらしい。


彼は慌てて治療を施し、何とか事なきを得たとのこと。



「きっと私達は誰かに助けられたのね」


「……感謝」


「黙れ役立たずども」



森に居た誰かに助けられた、か。


もしかして、バジリスクを狩った人物がまだ森にいて、

俺達を助けた?


……まさかな。



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