二人だけの地平線
遥かなる地平線に風が吹く。
色褪せた陽射しの下に、二つの影が揺らめく。くたびれた旅装の人馬が二騎、廃墟の枯れ野を並んで進む。どこへ行くのか、風に身を任せるかのような馬蹄に、枯れ草がなびき流れ、消えていく。風が流れ、風に流れる。しかし二騎の馬首は常に東を向いている。
風が吹き、地平線が物語る。
かつて大いなる災厄がこの地の多くを滅ぼした。〈
しかし神は平和をもたらしはしなかった。食べて、寝て、交わる日々の中に、争いは常にあった。そこかしこの争いは徐々に
かつて大陸を二分する〈帝国〉と〈教会〉はその覇権を巡り争った。長きに渡る戦争の末、両国は和睦した。やがて束の間の平和が成り、二人は出会った。男女は恋に落ち、そして多くを失った互いの故郷を捨て旅に出た。
東へ──二人の冒険は始まった。
二人は遥かなる地平線に夢を見た。しかし地平線のその色はどこまでも同じだった。
地平線は静かだった。大いなる災厄により滅んだ亡国にも、そこで繰り返される人々の営みにも、〈神々の児戯〉にさえも、風が何か答えることはなかった。
遥かなる地平線に風が吹く。
月日さえ朧げな二人の旅はまだ続いている──目的地は、あるいは終着点など存在するのか──それでも二人は共に進む。共に夢見た、微かな希望を信じて。
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