第10話 閑話休題

自分から損を買う必要は無い、と。

昔から逃げ遅れてハズレくじを引くようなズブな私に白木さんは

初めて仕事で「失敗した」時に言ってくれたことだった。


小さな頃から何にしても先回りと先読みが板につきすぎていて

早合点をしやすかった私に

焦るな、タイミング逃すなと言ってくれたのも

白木さんだった。


人を信じたいけど頼らない私に

人は信じるべきではない、だからといって疑うこともしなくても良い、「深入り」するなと教えてくれたのも上司だった。


それから硬い目玉焼きもスーパーのそーすを

かければ美味しくいただけることも

何だかんだで生活から考え方から矯正してくれた。


目に見えるものだけが、あるいは多くに信じられているものが「正解」とは限らない。

見えないものは見ようとしていないだけ。


「正解」はないなら正解と思う基準を

それぞれに作ればいいと、示してくれた。


自分の仕事を全うしろと、教えてくれた

いい上司。

いれてくれるお茶は熱すぎていつも火傷するし

何だかんだで大事な事は教えてくれないし

放任だし、

すぐ帰りたがる。

でも無視をされないし、変な子だと腫れ物にも触らない、加えて「正解」がありすぎて

正解が皆無のこの業種で生きていくには

あの背中とぶっきらぼうな優しさにはすごく安心した。


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