第12話 ルーン王国

ルーン王国。

それは魔法文明の発達した国。

ふんだんに採れる魔石を駆使し、

魔道具を大量に作る。

国民はその魔道具を買い求め、生活はより豊かになる。

魔道具を他国に輸出し、国は潤う。

一説によると、女神が降臨した直後、その鉱脈が発見されたそうだ。

まぁ、それも何百年も前の話であって、仮説の域からは抜けないが。


「で、ここで最後の確認だ。

お前は女神として振舞わず、このまま人として生きて行くのだな。」


「そのつもりです。」


「分かった。

この話はもうこれ以上蒸し返さない。」


「ありがとうございます。」


「何だ、ずいぶんしおらしいじゃないか。」


「そりゃぁ、相手が魔王様ですから。」


「……お前にとって、魔王とはどういう存在なんだ。」


魔王、人類を滅ぼそうと企んでいる、恐ろしい存在。

戦い好き、俺様で気に食わない奴はぶっ殺す。

とは言わない方が利口だろう。


「まあいい、歩きながら話すとしよう。

この世にはいろいろな種族がいる。

代表されるのが人。

まあ一番数が多いからな。

これも色々と分類分けされるが、交配その他でかなりの種類がある。

あとは獣族、人類より少ないが、これもかなりの種類がいる。

続いて、魔族だな。

先ほどの種族から比べるとかなり数は少ないが、種族はそこそこいるな。

地底属性の奴。天上属性の奴、獣相を持ったやつ、

まあ魔族と言う名の通り、殆んどの奴が魔法を使える。」


えっと、魔族が何故に天上属性?

私にとっての魔族の概念がだいぶ違うような気がする。

魔族と言えば、地底にいるおどろおどろしい存在だ。

そう言えばクロゥさんは魔王と言っていたけれど、

普通に領地を持ち領民がいる。

こりゃあ、一からこちらの世界の常識を、

勉強し直さなきゃダメだろう。


「他には希少な竜族、水にしかいない魚族。」


「竜に魚ですか。

もしかして人魚っているんですか?」


「あぁ、人族と魚族の混血か。

数は少ないが、いる事はいるな。」


何と、混血でしたか。

それも魚と人の。

恐るべし異世界。

ぜひ遺伝子の構造を見て見たい。

出来るのであれば、いつか、きっと。


「知能を持つ者は、俺が知る限りはこれ位だな。

あとは動物と魔獣か。」


「えっと、それはどういうふうに違うのですか。」


「主に魔力を持つか持たないかだ。

自分の体を武器として戦うのが動物。

魔力を持ち、それを利用して戦うのが魔獣ってとこか?

もっとも、両種族のなかにも戦いを好まず、

隠れ住んでいる奴もいるが。」


「つまり、魔力を持たない獣が動物で、持つものが魔獣ですか。」


「まあ、そう言う事だ。

ここだ。」


「はい?」


「女神の事を調べている人間の家だ。」


「えっ?あ…あぁ。」


その人もルーン王国の人だったのか。

でも、いざその人の家の扉を叩こうとした時、

なぜか私は叩けなかった。


「どうした。

話を聞きたいのだろう?」


私は震える右手を抱え、立ちすくむ。

これは…恐怖。


「やはりな。

怖いのだろう。

お前の知り合いの死んだ話を聞くのが。」


「死んだって決まった訳じゃ無い!」


「そうか、

……そうだな。」


そして私はその勢いのまま、その家の扉を叩き倒した。


「何の用だ。」


しわの深い一人の男が中から現れる。

生気の無い目をし、よれよれの衣服を纏っている。

どう見ても学者には見えない。


「………。」


「何の用だ。」


「えっ、と。

あの、私は、その…めっ……。」


どうもあの言葉を言う事を、この口が拒否しているようだ。

一番の目標だったのに。


「こいつは貴殿の調べている女神に付いて知りたいそうだ。」


直問いですかー!

それにしても、女神の理だ~力になるだ~と色々言っていたくせに、

私の事をこいつだお前だと、色々酷くありませんかー。


「お前は自分の立場を考えてから物を言え。

一般人が、目上の男に対して、どういう態度を取るのか取られるのか、

よく考えてみろ。」


ぐわぁぁぁ。

確かにそりゃぁ、女神公表無しで生きると決めたよ。

だれにも頼らないって、いや、実際は頼ってるけどさ。

この魔王様に。

って、ああいうものの言い方をされるのは普通か。

すいませんでした!


「女神だと?

もう情報が入ったのか、早いな。」


それはもしかして、ハナエ様の事を言っているのか。

確かにマニアだな。

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