第15話 波乱、前兆

「シオン、本当に見つけたのぉ? 岩龍がんりゅう時炎怒ジエンドの所有者を」


茜色の竜、ピアは紫色の竜シオンから聞いた事に半信半疑だった。


「間違いないわ、時炎怒ジエンドとその赤い龍は言っていた、そしてその側にいた茶髪で赤毛の混ざった少女も同じ竜技をだしていた。」


「えぇ!? その少女『封刃』一族の竜技を扱えたの!?

でも......ふふっ、そういうの"好き"だわ。 でも.......どうしてその時狙わなかったの? チャンスじゃなぁい?」


ピアは不思議そうな顔をした。


「えぇ....確かに私の竜技"培音輪バイオリン"を使えば2人の確保は出来たかもしれない......でもフォーコは赤い龍と戦闘した時、右裁榴ミサイルの爆破能力が発動しなかったと言っていたわ、そうでしょ、フォーコ?」


その場にいた深碧しんぺき色の竜、フォーコは答える。


「はい、私は確かに赤い龍と戦闘した時、右裁榴ミサイルを放ったのですが、赤い龍の時炎怒ジエンドに切られた私の棘は爆破することはありませんでした」


「つまり、それは爆発の能力が通用しないという事、もし私の竜技を使用したとして通用しなかった場合、私は一気に不利になる、それに、少女も一緒にいるのだから2対1でやる事になる。」


「あぁ! そうだよねぇ、その少女も同じ力を使うなら尚更ってことよねぇ」


ピアはそう言った後何かを思い出したように、目を煌めかせ言った。


「そうだ、ごめんシオン、言うの忘れてた事があってさぁ、私の竜力、好信こうしんでジュア様とさっき連絡を取ったのねぇ、 『時炎怒ジエンド』と『忘岩ボウガン』の所有者の目星がついたって事を話したら、後1人竜を向かわせるから共に任務を遂行しなさいって言われたのよぉ」


「やぁ君たち、久しぶりだね! 」


「あっキタァ! やっほー! 」


ピアは後ろの声に返事した。


振り返ると同じ背丈位の群青ぐんじょう色の竜が歩いてくる。


「お久しぶり、ウラノス。」

とシオンは答える。


「やぁシオン、久しぶり、ジュア様から聞いたよ、時炎怒ジエンド忘岩ボウガンが近くにいるんだってね」


「えぇ、そうよ、あなたまで来てくれるなんて凄い頼もしいわ」


群青色の竜、ウラノスはフォーコに声をかけた。


「おや、君は初めて見る顔だね? 」


「初めまして、自分は右砲竜うほうりゅうフォーコです。闇劇家あんげきかに雇われて岩龍を追ってました。」


ウラノスは笑って言葉を返す。


「雇われた?......そうか、道理で知らない顔だと思ったよ、よろしく、俺は空創竜くうそうりゅうウラノスだよ。」


ピアはフォーコに言う。


「フォーコ、ウラノスはねぇ、闇劇家あんげきかの頭であるジュア様の次に強いんだよぉ、私とシオン2人がかりでも勝てないくらいねぇ......」


「......そうなんですか!? ではウラノス様と呼ばせていただきます。」


ウラノスは答える。


「よしなよ....."様"なんてつけなくていいよ、ウラノスでいい、それに上下関係を明確にする必要はないだろう、お互い協力関係にあるんだ、そこに上下関係なんてつけたら、パフォーマンスを発揮出来ないだろう? 皆それぞれ良い力を持っているんだから....上に立つのはジュア様ただ1人のみ、俺たち闇劇家あんげきかは一丸となり任務を遂行し"輝くんだよ"」


「分かりました......ではウラノスと呼びます」


「"敬語"か......まぁいいだろう、話しをしよう」


闇劇家あんげきか一同はこれまでの情報を共有した。


シオンは"龍治院"を指差した。


「あそこに、"目標"がいる。」


ウラノスは龍治院を見て言った。


「なるほど、俺の竜技であそこを"閉じこめれば"いいって事だな」


ウラノスは立ち上がり龍治院に向けて手をかざした。


落御迎戯隠ラオムゲイン


ウラノスの手から現れたのは光の六芒星、光は龍治院に向けて細かい粒子となって降り注いでいく。


「ざっくり20-30分と言った所だな、龍治院の中の時と外の世界の時を分離させ龍治院を別空間へと"作り替える"にはな」


「了解」とシオン


「やっぱこの竜技大好き。」とピア


「一体どうなるんです?」とフォーコ


「そうだったね、フォーコは初めて見るよね、とりあえず大切な事だけ言っておく、今から龍治院を"作り替えたら"俺の竜力、輪歩ワープでみんなを"作り替えた"龍治院の中まで瞬間移動させる、それから俺の竜技、落御迎戯隠ラオムゲインの効果が切れるまでに『時炎怒ジエンド』『忘岩ボウガン』の確保、もしくは抹殺だ。邪魔をする者がいればそいつも殺しても構わないよ」


「はい、分かりました」


「それから、ウラノス、気になる事がまだあるの......」とシオン


「あぁ、聞こう」


これからだ......追い詰める。ウラノスは話を聞きながら竜技に集中した。


***


竜治院では治療士ロウラが4階にある9号室にいる患者の様子を見に行っていた。コンッ、コンッ、ドアをノックする。


「はぁい、どうぞー」明るい少年の声が聞こえてくる、


「おはよう! ソウ君、怪我の様子を見に来t」


ドアを開けて少年ソウが横たわっていた、その背後に腕を組み、物凄い虎の様な形相を浮かべた黄色の竜がロウラを睨みつけていた。


瞬間ロウラは背筋が震えた、いや......痺れも感じとった様な気がした。


「ジル! 表情! 表情! 鬼みたいな顔になってるよ! 駄目だよ! ロウラさんだよ! 僕の怪我を見てくれてるロウラさん!! 」


ジルと呼ばれた黄色の竜はソウに言われ、やっと気付いたのか先程の表情は一瞬にして崩れ去り、急に気まずくなったのか額に汗をかき、ロウラに一礼し。


「突然睨みつけてしまい、すまない! 」


そう言うとベッドにいるソウに向かって。


「ソウ、俺ちょっと顔洗ってくる! 」

といい急いで部屋を後にした。

ガシャン! ドアは少し荒っぽく閉められた。


「ふぅ.....」ロウラは突然の事に面食らっていた。


「すみません、ロウラさん、ジルは悪意があるわけじゃないんです、静かな場所でいきなり物音が聞こえたら反射的に怒りの衝動が芽生えるんです。」


「そ、そうなのね、でもあなたと仲良さそうね......」


「えぇ、僕はジルと一緒に"銃の国"から逃げてきましたから、ここに来るまで毎日が命懸けで、いつ襲われるかわからないほどだったんです」


「寝る時も一緒に代わり合いで見張っていて.....そのせいかは、分かりませんがジルは物音に対して敏感なんですよ、でも、もうノックでは驚かないですよ、本人も分かってるはずです」


「そうだったのね......大変ね、あなたもジルも命を狙われて、......怪我はどう?」


「もう、歩けますよ、その内走れるかも!」


「良かったわ、治るまで休んでていいからね! 」


「分かりました! 」


藍色の髪の毛にきんぱつが混ざった少年は元気よく答える。


「じゃあ、私は3Fにも用があるからこれで」

ロウラは部屋を後にした。


「うん、ありがとう」


しばらくするとドアを開けてジルがやってきた。


「あっ! ジルさん!ロウラさんは大丈夫だよ! 僕がちゃんと話しておいたからね、ジルの事分かってくれたよ! 」


「あぁ、それならさっき顔洗ってる時に会ったぞ、すごく気まずかったぞ.......」


「えっ? 洗面所は4Fの西側、東側にしかないよね」

(あれ、3Fにそのまま降りたんじゃないのかな?)


「それに、赤い龍と肌色の竜を見なかったかって聞かれたな、ソウは知らんよな?」


「さぁ? 僕にもさっぱりだね」


ソウはなんとなく周りを見渡した。窓から見える景色が可笑しい事に気付いた。


空がピンク色? あれっ、青じゃない? あれっ、目が可笑しくなったのかな?


「ジル、あの空何色に見える?」


ジルはそう言われ窓をみた。


「ピンクか? "この街"ってこんなものか? 初めてみるな」


「だよねぇ、ピンクだよねー、ちょっと僕外まで行こうかな、ジルさんも来る?」


「そうだな、ちょっと珍しいから見てやるか 」


少年ソウと黄色い龍ジルは1Fまで中央のリフトを使い降りる。


2人はそのまま、出口まで歩いたが何か見えない力に弾かれ出ることが出来なかった。


「なにっ!?......何だこれは! ソウ !これは? 」


「ジルさん、僕にも分からないよぉ? これじゃ閉じこめられてる事になるじゃないですか! 」

後ろから声が聞こえた。


「あぁやっと会えたー! ねぇ君たちぃー?赤い龍と肌色の竜をここで見なかった?」


2人は振り返った茜色の竜がそこにいた。


「あっ、ジル、表情! 表情! 初対面なんだよ!」

ジルは物凄い形相で睨みつけていた。しかしすぐハッとなり、


「きっ、君ぃ! 初対面なのに睨みつけてしまった! す、すまない!」


ジルは一礼する。


「ちょっと私もビックリしたけどいいわょぉ、そういうの"好き"だから!」


(ちょっと待ってこの龍、初対面で好きとか言ってるけど大丈夫かなぁ......)と少年ソウは思った。

(まぁ、いいや)


「あの、赤い龍と肌色の龍のことは全く知らないです、それより、聞いて下さいここから出られないんです! 」


「えっ、そうなの可愛そう、慌てちゃってぇ。」


「でも、大丈夫よ! ここでは"時間が止まっているし"部外者は基本的には傷付けないから、基本的にはね」

(部外者? 時間が止まっている?)


「その、赤い龍と肌色の龍がどうかしたのか?」

ジルが尋ねた。


「えぇ......大事なことなの、確保もしくは抹殺しないといけなくてね」

(まっ、抹殺!?)


「じ、ジルさんこいつは......」


「あぁ! こいつはまともじゃないかもな……なぁお前、抹殺とか言ってるが本気か? 俺たちの聞き間違いだといいが」


茜色の竜は笑って言う。

「どうしたのぉ?、信じられないのぉ? まぁ、とりあえず邪魔はしないでね、自分で探すから」


その後茜色の竜は目を煌めかせていった。


「それとも一緒に探してくれるのかなぁ? あなた達も!」

ソウは言った。


「ふざけるなよ、平気で抹殺するとか言ってるけど! 」


「分かったわぁ、それでぇ? 邪魔は? 」


「するに決まってるだろ!ジルさん、こいつを止めましょう!」


「あぁ、こいつは放っておいたら駄目だな!ここを閉じこめたのもお前か?」

虎の様な形相で茜色の竜を睨みつけそう言った。


「私は闇劇家あんげきかの1人、初恋ウイレン竜ピアっていうのよ、閉じこめたのは私じゃないわょぉ。」


「僕の名はソウだ! 稲妻いなずま竜ジルの弟子!」

ピアは目を煌めかせて言った。


いい名前! 好きだわ......」


「おい、ソウ俺の名前まで教えるなよ......こんなのに俺は好かれたくねーぞ! 」


「あっ、すみません」


「私の邪魔をするところはあまり好きになれないわねぇ......」


2人はピアを睨みつけ同時に言った。


「「俺/僕も一緒だ!」」


雷降ライフル!」


怒雷武ドライブ!」


2人は竜技を構える。少年ソウは雷の猟銃りょうじゅうを稲妻龍ジルは雷で生成した刃を。


「えぇ! なにそれ!? ステキねぇ!」

初恋ウイレン竜ピアは激しく目を煌めかせていた。

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