第2話 遭遇その2

 薄暗い洞窟の中リィラは再び松明に火を点けた。

 道だと思っていた場所は変わらず壁のままだった。

(……私は迷ったのかな……いや、確かにここから来たはず……)


「ごめん、ログちょっと道を間違えちゃったみたい、向こうに行こう?」


 そう言って来た方向とは逆の方向を指し示すリィラ。

 岩龍ログは首を傾げた。


「……リィラ……君が来たのは後ろからではないのか?」


「そうだったはずなんだけど壁になってるの」


 ログは眉をしかめてリィラの後ろを指差していった。


「リィラ……道が続いてるみたいだ……」


 リィラは咄嗟に振り向いた。


「えっ……本当だ!?さっきまでの壁が無い!」


 リィラは驚いたが、すぐにログの手を掴み、


「今の内だわ、何が起こってるのかさっぱりだけど

 急いでいきましょう!」


「リィラ走っていいか?」


「足の怪我は大丈夫なの?」


「あぁ、問題ない」


 少女と岩龍は走り出し急いで出口を目指す、

 松明の火は走った時の勢いで消え出したが……光が見えてきた、


 いや……光がいきなりでかくなり接近してきた、奥には雨が降っている山の様子が見える。


「あれ?もう出口なn」





 その時空気が揺れたような気がした。生暖かい風に触れたような感触を感じた。


 瞬間目の前が真っ暗になった。


 リィラは左を見た……出口の光がそこの奥に見えた。


「ログ今のは……」



 後ろからうなり声が聞こえる、リィラは慌てて松明に火をつけログの方を振り返る、ログは頭を苦しそうに抱えていた。


「ログ!?大丈夫!?」


 息遣いも荒々しくなっている。


「リ……リィラ……ここは……危ない……思い出したんだ……俺は

 ハァ……ハァ……ここで……」


 その時冷たいような声が聞こえた。


「やっと見つけたよ!そこでおとなしくしてくれよ岩龍?」


 リィラは出口の方から聞こえる声の主を探し松明を向けた………灰色の龍だ!


「あなたは?」


 リィラは少し震えた声で尋ねる。


「君に用事は無いよ、名乗る名もね。」


 灰色の龍はリィラを見下ろし冷たい口調で話す。


「あなたはここの出口は知らないんですか?」


「知ってるよ……あっちでしょ」


 灰色の龍はリィラを見下ろしたまま光が射している方向を指差している。


「リィラ!!伏せろ!!」


 ログが突然叫んだ、リィラは反射的に塞ぎこんだその瞬間ログは岩で生成した刀を横一閃に振り払った。



砕練刀サイレント!!」


 不意打ちを受けた灰色の龍は勢いよく一方通行の横の壁に吹っ飛び壁にめり込む程だった、壁にぶつかった時の

 衝撃音はまったく聞こえなかったが勢いよく砂埃が舞った。


「リィラ!今の内だ!出口に向かおう!」


 ログの真剣な表情を見たリィラはまだ状況が掴めていなかったがそれ以上にここから出ないといけないという

 気持ちが勝った。


 リィラとログは急いで出口まで走った。

 遠くから声が響いて聞こえた。



螺琵輪州ラビリンス!」



 目の前の出口は真っ暗になり右側の奥から出口の光が射していた。


「また!?……まただ!?出口が変わって……」


「リィラ……これは奴がやったんだあいつは自分のことを

 迷宮竜と名乗っていた……」


「リィラ後ろに下がっててくれ……ここは何とか凌ぐ。」


「ログ!……まだケガが治ってないのに……」


 岩龍の足に巻いていた包帯から血が滲み出している……

(無理に動いたから……傷が開いたんだわ……)


「大丈夫だ……さぁ、早く。」


「分かったわ……ログ……無理はしないで……

 私にも方法があるの」


 リィラはポーチから鈴を取り出しログに見せた。

 ログは首を傾げた。


「それは?」


 その時奥の洞窟から石が転がったような音が響いた。

(迷宮竜が……来る!)


 リィラはログの耳元で囁いた。


「分かった!その時は頼む。」



 リィラは後ろの近くにあった岩場の陰に隠れた。洞窟は出口から差す光で薄暗く照らされているがあまり遠くまでは見えない。リィラは松明で周りを照らし見渡して見ると出口ではない方の道にはいくつかリィラ程の身長の岩場がある。


「ここでなら!」

 リィラは更に少し離れた岩場で隠れ鈴を鳴らし始めた。


 ***


砕練刀サイレント!!」


 ログは岩で生成した刀を強く握りしめ構えていた。

 迷宮竜がすぐそこまで近付いて来ていた。


「いったいなぁ……"迷宮化めいきゅうか"が間に合っていなければ君のさっきの一振りで致命傷だったよ……」


 ログは砕練刀サイレントを構え迷宮竜をにらみつけている。


「僕の竜技、螺琵輪州ラビリンスからは逃げられないよ。」


 灰色の龍は手に直角に何度も曲がったような歪な剣のようなものを持ち迫って来ていた。










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