第10話 続勉強会 佐藤みさきの場合
「唯ちゃんとまー君って他の兄妹と比べても仲がよさそうだよね」
「私はお兄ちゃんとずっと一緒に過ごしてきたんで、それも関係あるかもしれませんね」
「私はお姉ちゃんとそこまで仲良くないから羨ましいけど、唯ちゃんみたいに兄妹を好きになる事は出来ないかも」
「お姉ちゃんとお兄ちゃんじゃ接し方も違いますよね。私はお姉ちゃんと買い物とか行ってみたかったですけどね」
「それなら今度一緒にどこか買い物しに行ってみる?」
「いいんですか? 私はみさき先輩と一緒に買い物行きたいです」
唯ちゃんとお話をしていると、ゆっくり扉を開けてまー君が戻ってきた。勉強道具の他に卒アルらしきものを持っていた。私はすぐにでもそれを見てみたいと思ったけれど、それに飛びつくのもはしたないと思ったので我慢しておこう。
「お兄ちゃんも私が淹れた紅茶を飲む?」
「いや、紅茶は飲まない」
「そっか、今日のはみさき先輩も美味しいって言ってくれてるのにな」
まー君と唯ちゃんが楽しそうにしているのを見ているのは私も楽しくなってしまう。二人とも本気で争っている感じが無いけれど、それなりに争っているように見えるのが不思議だ。唯ちゃんの手を交わしたまー君が隣に座った時はちょっとドキドキしてしまったけれど、これからこんな場面がたくさんあるだろうから慣れておかないとね。
私の隣に座ったまー君が卒アルの表紙を捲って私に渡してきた。
「唯のクラスがどこかわかるかな?」
「見ていいの?」
「見ても大丈夫だよ。唯も本当は見られるのが嬉しいと思うし」
「ちょっと、お兄ちゃん。勝手なこと言ってみさき先輩を困らせないでよ」
唯ちゃんの表情と態度を見る限りでは、本気で嫌がっている様子はなく、本当にいやだったら今も座って見ていないで奪いに来ているだろう。他の人だったらイラっとしてしまうかもしれないけれど、唯ちゃんは可愛いからそんな感じは受けないかも。
「唯ちゃんが見ても良いって言うなら私は見ようかな」
「みさき先輩がそんなことを言うなら断れないじゃないですか」
「ありがとう、唯ちゃんのクラスを探してみるね」
「でも、今度みさき先輩の卒アルも見てみたいです」
「私のはごく普通だと思うから面白くないかもよ」
「私も普通ですよぉ」
最初のページに見開きで卒業生が集合しているのだけれど、私はこのページの中から唯ちゃんを探せるか頑張ってみよう。クラスのページだと名前も書いてあるだろうし、ここから見つけた方が印象いいと思うからね。
「どうかな? そんなに変わってないと思うから難しくはないかもしれないよ」
私の中学よりは2クラスくらい多いのかな?
ちょっと人数が多いような気がしていたけど、一通り見てみたら一際可愛らしくて私好みの女の子が見つかった。多分このメガネの子が唯ちゃんだと思う。顔はそんなに変わっていないと思うけど、眼鏡をかけてるからぱっと見わからないじゃない。でも、ちょっと余裕を見せてみようかな。
「唯ちゃんは小学生の時も可愛いからすぐにわかったよ」
「みさき先輩はもう見つけたんですか?」
「このメガネの子でしょ?」
二人の反応を見ると、私は正解したらしい。ちょっと自信なかったけれど、当たって良かった。
「やっぱり唯ちゃんは小学生の時から可愛かったんだね」
「なんですぐに分かったんですか?」
「唯ちゃんとまー君って似てるなって思ってたんだけど、順番に見て行ったらまー君に似ている唯ちゃんがすぐにわかったよ」
「でも、眼鏡で結構印象違いません?」
「そうだね、印象は少し違うけれど、それでも唯ちゃんの可愛らしさは隠しきれていないよ」
唯ちゃんは可愛いから眼鏡も似合っているのか、眼鏡が可愛らしさをより引き立てているのかわからないけれど、眼鏡が無くても眼鏡をかけていても可愛い唯ちゃんに違いはなかった。出来る事なら目の前で眼鏡をかけている唯ちゃんを見てみたいな。
「この写真の眼鏡って持っているの?」
「ありますけど、変ですか?」
「ううん、とっても似合っていると思うよ」
「嘘じゃないですよね?」
「嘘じゃないよ。本当に似合っているなって思うよ」
「じゃあ、持ってきますんで待っててくださいね」
唯ちゃんは私の言う事なら聞いてくれるのかな?
でも、あんまり無理強いは良くないと思うから、ソフトな感じにしておかないとね。まー君も入れてそのうちもっと楽しい事出来るようになるといいな。
「そんなにすぐわかるもんなの?」
「ぱっと見で何となくはわかったよ。眼鏡をかけているからちょっと不安だったけれど、唯ちゃんみたいに可愛い子が他に見当たらなかったしね」
「これだけの人数がいたら他にも可愛い子はいるんじゃないかな?」
「そうだね、何人かは可愛いなって思うけれど、唯ちゃんと比べるとそこまででもないかなって思っちゃうかも」
普通に可愛い子は何人かいたと思うけれど、唯ちゃんみたいに可愛さの限界を超えている人はいなかったと思うんだよね。
目の間に本人がいるのも大きなヒントになったと思うんだけど、それを除いても唯ちゃんの可愛らしさはずば抜けていたと思うな。もっといろんな唯ちゃんを見てみたいな。
いろんなまー君が見れたらそれの方が満足なんだけどね。
「唯が戻ってくるまで少しの間だけど勉強しとこうか?」
「そうだね、少しは真面目に勉強やらないといけないよね」
「とりあえず、暗記が苦ってって言ってたから歴史から始めようか」
「数学ならすぐに答えわかりそうだけど、歴史はあんまり自信ないかも」
「そうだと思ったから歴史にしたよ」
うーん、暗記は苦手なんだけど、苦手なだけで出来ないわけじゃないんだよね。せっかくまー君が教えてくれるみたいだし、わかるところもわからないふりをしてみようかな。とりあえず、わかるところはやっておこう。
「わからないところがあったら聞いてね。ちゃんと答えられると思うけど、不安だったら調べるけどね」
「それなら私もわからないところを調べちゃうよ」
「その方が効率良いかもね」
「もう、それだったらまー君と一緒に勉強する意味無いじゃん」
ちょっと問題に集中しすぎて質問するの忘れちゃってた。どこか難しそうなところを探して質問してみないとね。
でも、この教科書ってまー君が使ってるやつだよね?
そう思うとこの教科書もまー君の一部なんじゃないかな?
もっと近くで見たらまー君の匂いとかしちゃうかも。少しだけ確かめてみようかな。
「どこかわからないところあるかな?」
問題を解くよりも匂いを探すことに夢中になってしまっていたよ。変に思われていたらどうしよう。でも、まー君の匂いを嗅いだこと無かったからちょっとわからないかも。唯ちゃんがいない時に抱き着いてみようかな。
「今のところは大丈夫だよ」
「もしかして、目が悪いの?」
「え? う、うん。そんな感じかな」
「女の子は大変だね」
まー君は私も目が悪いと思っているみたいだけど、私は目が悪くないんだよね。でも、女の子は大変って何だろう?
今なら抱き着いても大丈夫そうだし、抱き着いてまー君の匂いを確かめてみようかな。
「二人ともちゃんと勉強しているの?」
って思っていたら唯ちゃんが戻ってきちゃった。眼鏡姿は可愛いけれど、今はちょっとタイミングが悪かったかも。抱き着いている姿を唯ちゃんに見られなかったのは良しとしなきゃね。
「唯ちゃんは眼鏡をかけても可愛いね」
「えへへ。みさき先輩に褒められると嬉しいです」
「唯ちゃんは眼鏡をかけてもかけなくても可愛いよね。まー君もそう思っているんでしょ?」
「そうだね。唯はいつでも可愛いよ」
唯ちゃんはいつでも可愛いと思うけれど、私の事も可愛いって言ってくれてもいいんだよ。そのうち自然に言ってくれるようになると思うけどね。
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