第12話 たいっちゃんのもっと深い闇

「不動産代わりって?」

「たいした物件じゃないの、昔は社員寮に使ってた一応鉄筋モルタルの三階建て九軒あって二階の一軒は事務所兼私の部屋、残り八軒を賃貸物件で貸していて集金とかトラブルの対処、部屋が空いた時のチラシ配りとか色々させられてるって言うか、スーパーは弟にその他もろもろは私に継がせるって中学校に入った時に言われたわ」


 たいっちゃんは僕の傍に戻ってきて横の席に座り、

「にゃー」

と鳴いて僕に寄りかかり、

「帰りたくないよ」


 今までにない切実さでつぶやくと僕に縋り付いてきた。

「たいっちゃん」


「美和ちゃん継ぎたくないの」

 お母さんがやさしく言う。


「不動産はいんです、あの、、、私今の親の所に来たのは中学に入ってからで、、、」

「言いたくなければ言わなくていいのよ」

「いえ旦那様になる人には絶対知っておいてもらいたいんです」

 お母さんの方を見つめているのでお母さんもこっちに来てテーブルの向こう側に座る。


「今の親代わりの人は父の息子で、、、私と異母の兄なんです、弟は兄の子供、だから私は親戚の家に預けられている様なものなんです」

「じゃあお母さんは?」

「赤の他人、私を押し付けられた可哀そうな人って事になるのかな、それとですねブラック店長は偽物なんです」

「偽物って?」

 お母さんが腑に落ちない顔で聞く。


「ほんとは兄、今のお父さんが店長なんですけど極端な引きこもりでほとんど家を出ません、それじゃあ店長なんて務まる筈もなく、いつの間にか警備員だった人に店長を任せて親にはさも自分が店長をやってる風に見せかけているんです」

「えー!じゃあいつも偉そうに怒鳴ってるあの男ってただの警備員って事なの」

「一応社員に採用はしていますけど唯のヒラです」

「なんですってあの野郎明日締め上げてやりたいわ」

「でも一応代行ですから、父に湊さんには便宜を図るように言っておきますから、ただ週に一二度くらいしか会社に出ないものですから二三日は我慢してください、お願いします」

「あっごめんね美和ちゃんが悪い訳じゃないのに、でもあなたしっかりしているわね便宜を図る何て普通の高校生言えないわよ」


 たいっちゃんは俯いて、

「元の親に見放されたんです、兄もですけど、父にとってジャンボスーパーはお荷物の様なもので売り時を待っているんです、実家は地上げで稼いだ不動産とか裏金うらきんとかほんとに悪どい会社なんです、中学まではそんな事知らなくて父の言う通りの勉強をしていました、言葉遣いもその時に教わったというより仕込まれたんです、勉強熱心で親切な人に見られるように、はっきり言えば悪徳セールスマンに仕立てられる教育を小学校の時からされてたんです」


 僕もお母さんも言葉が出なかった。

「あっあの不動産の管理は何処の仕事なの」

「兄です、スーパーの持ち物なので実家はそこまで気にしていません」

「なんか頭痛くなってきたわ、こんなこと言っていいのか分からないけどとんでもない所に生まれてしまったのね」

「ほんとにとんでもないです、だから早く家を出たいんです、いつ実家に呼び戻されるか分かりませんから、誓昨日来た家は実家なの、部屋の中にテレビカメラが有るって言ったでしょ、私は誓の嫁になりますって見せつけてきっぱり実家から見捨てられたかったの、上出来だったわ、勘違いしないでよ目的は誓と結婚したいからそれが私の目標、分かって」

「う、うん分かってる、できるだけたいっちゃんを守る」

「だめ太知たいちは捨てるの美和って呼んで」

「み、美和」

「ちかいー」


 美和ちゃんは僕にしがみついてきた、

「帰りたくない、ここに居させてー」

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