第2話 母さんごめん

 学校へ行けなくなって早二週間、朝「調子はどう?お昼もちゃんと食べるのよ」お母さんはそれだけ言って仕事に出かける。


 巷ではコロナウイルスが猛威を振るうようになっていた、そんな中でも母は自転車に乗ってボロボロのマスクで出かけて行った、どこへ行ってもマスクは売り切れ「仕方がないから何度でも使わなくちゃ」そう言うけどまだ使ってないマスクが有るのを僕は知っている、僕が学校へ行くための分をこっそりタンスの中に仕舞っている。


「マスクか、、、布で作れないかな」


 ネットで検索してみた。

 <ガーゼを折りたたんで簡単マスク>

 <ハンカチやタオルでも作れるマスク>


 なんだ割と簡単にできそうだ。

 ぼくは男としてはどうなの?という裁縫や料理が得意、いや好きなんだ腕は大したことはない。


 タンスの中をごそごそ探して僕が小学校時代使っていた真っ黄色のミッフィーのハンカチを見つけた。

(いつまで取っておくの)


 動画はミシンを使っていたがうちにミシンはない、針と糸ですいすい縫う。

 しかしゴムがない。。。


 もう一度検索。≪ゴム 代用≫

 <Tシャツを使います>


 Tシャツ?着ないようなTシャツを探す、これももう着れないサイズが次々に出てくる。(はあ)


 幅一センチに切り端を結ぶと大して伸びないけど代用ゴムに使えそう。

 こんな事やってると楽しくなってくる僕。


 もっとハンカチを探す、何枚かあるけど現役で使えそうなのは横に置いて、白がちょっと黄ばんだのとオレンジのタオルハンカチ、これなら使っても文句は言われないだろう。


 タオルハンカチを折りたたみ(切らずに作れるサイズ)端を折り曲げ端だけ縫えば出来上がり。

 合計三枚作った。


 ついでだ、白のマスクにエプロン姿の女の子の刺繍を入れる、さすがにこれは時間が掛かった、もうすぐ11時、いけない勉強してない。


 裁縫道具を放り出して苦手な数学、あー眩暈≪めまい≫が。

 国語はまあ漢字に四字熟語淡々とこなす。

 理科社会、眠い頭くらくら。


 遅い昼食を取って、(そうだ晩御飯作ろう、おかずはお母さんが買って来るから炊き込みご飯かチャーハン)

 冷蔵庫を覗くとエリンギが有った、これはエリンギ炊き込みご飯、即決定。


 エリンギとかまぼこを刻んで炊飯器に一合半のお米と混ぜ、醤油、みりん、料理酒、時間を見計らってスイッチポン、英語もやらなきゃ。


 五時過ぎお母さんが帰ってきた、炊き込みご飯のいい匂いが充満している。


 お母さんの顔が何故か浮かない。

「誓≪ちかい≫料理なんてやってたの」


 笑顔で答える。

「うん、手間掛けてないから、ちゃんと勉強やってた」

 お母さん横を向いて

「私お料理下手だもんね、ごめん」

「違う、お母さん大変そうだから、、、僕サボってるし、何か手伝えないかと思って」

「何があったか知らないけど、勉強の方が大事なんだから、ちゃんと学校、、、無理しなくていいから」

 やっぱり不機嫌そうな声で。


「ごめんもうちょっとだけ、もう少しだけ待って、僕がこんなだから、頼りないよねごめん」


 お母さんは散らかっているテーブルをかたずけ始めた。

 オレンジ色のマスクを手に取り

「これ誓が作ったの」

「う、うんマスク無いから」

「ほんとにこう言うのだけは得意なんだから、三つも?」

「要るでしょ」

「誰かにあげるの」

「うんお母さん」

「ば、ばか」


 恥ずかしがってマスクで顔をパタパタしてから、

「皆マスクが無くて困っているんだ、ハンカチ買って来たら縫ってくれる、あー休憩時間に」

「いいよ割と簡単に作れるから」



 次の日から急に忙しくなった、お母さんが大量注文を受けて帰ってきたのだ。

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