「溺愛」「婚約破棄」「ざまあ」短編集
克全
皇叔は公爵令嬢を溺愛し、公爵令嬢を傷つけた皇太子を許さない
第1話
アリアンナはとても憂鬱だった。
今日もまた大嫌いな皇太子とダンスを踊らなければならないのだ。
皇太子は婚約者ではあるが、どうしても好きになれなかった。
できることなら破談にしたかった。
だが、皇帝陛下から強く願われては、断ることはできなかったし、今更破談にもでいなかった。
だがそれでも、身の毛がよだつほど嫌っているのは否定できない。
あの蛇のような冷酷で厭らしい視線を向けられると、怖気が全身を駆け巡るのだ。
家臣や友人達が集めてくれる皇太子の話は、信じられないくらい酷いモノだった。
そんな人非人に皇太子の地位を与え、婚約しろと命じるなんて、恐れ多いことではあるが、皇帝陛下の正気を疑ってもいた。
皇太子の誘いであっても、非公式の誘いは全て断っていた。
密偵や家臣を使い友人にも頼んで皇太子と取り巻きの情報を集め、罠に陥らないように細心の注意を払っていた。
だが、友人が一人二人と皇太子や取り巻きの毒牙にかかり、自害したり皇都去っていったりした。
徐々に味方になってくれる友人がいなくなり、アリアンナの不安が強くなる。
そんな時に皇太子の提案で、父親のファインズ公爵が皇都を遠く離れた辺境の大将軍に任命された。
しかも州牧を兼任するという大役であった。
それだけではなく、役目を全うした暁には、郡王に封じるという皇帝陛下の内意まであったのだ。
皇族の皇位継承争いが激しいウォレス皇国では、直系皇族は領地も権限の制限されるようになっていた。
代が下がって皇位継承権が低くなり、臣籍降下してファインズ公爵を名乗ってはいても、ファインズ公爵は警戒対象のはずだった。
それが大軍を預かる実権と郡太守を罰する権限が与えられたのだ。
何か裏があると考えるのが普通だった。
アリアンナは父親の軍務を助けるという名目で、皇都を離れたいと願い出た。
皇都を離れて辺境で皇家皇国に尽くすという名目で、皇太子の婚約者を辞退すると申し出た。
だがどちらも認められなかった。
引き続き皇都に残って皇太子の婚約者の地位に留まれという勅命であった。
アリアンナを皇家皇国に対するファインズ公爵の人質と考えれば、そうやすやすと皇都から出してもらえるわけがない。
だがそんな理由ではないことは、密偵や家臣が集めてくれる裏と表の情報を精査すれば、簡単に分かる事だった。
アリアンナを心から慈しんでる父親のファインズ公爵も心配で仕方がなかった。
「心配するなアリアンナ。
私が手塩にかけて育てた姫騎士達を残していく。
お前達、命を懸けてアリアンナを護れ!
必要ならが皇太子を殺して構わん。
その時の責任は俺がとる!」
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