第5話
「じゃあ死ね」
ルーベンの決断は早かった。
犯罪者達の言っている事は真実だと判断して、問題が起こらないように殺してしまうことにしたのだ。
「おい、それじゃあ取り調べが……」
「無理ですよ、班長。
取り調べる前に私達が殺されてしまいますよ。
その後でこいつらは無罪放免です。
そんなことになったら、アンナがどんな報復を受けると思っているんですか?」
「駄目だ!
アンナが報復されるような事は絶対にさせん!」
「だったらここで、こいつらを皆殺しにするしかありません。
死んだらもう悪事はできません。
悪事がでいなければ、賄賂もおくれません。
賄賂をおくれない犯罪者のために動く貴族士族はいませんよ」
「やめろ、やめてくれ!」
「金はくれてやる。
ありだけの金をくれてやるから助けてくれ!
「幹部にしてやる。
裏金を使ってお前達を警備隊の幹部にしてやる」
「女だ、好きなだけ女を抱かせてやる。
なんなら幼い子供を抱かせてやるぞ」
「下衆は死ね!」
一瞬だった。
一瞬でギュンターの怒りは頂点に達した。
直前まで、私刑を行う事を躊躇っていたギュンターだが、女を物ののように売り買いしている事が許せなかった。
特に幼い子供まで性の対象にしていると聞いて一切の躊躇もなく殺人を断行した。
「やれ、やれ。
バカな連中ですね。
班長相手に女を物のように与えようとするなんて。
班長は純情なんですよ」
そんな事を言いなら、ルーベンは犯罪者を殺していった。
そこには躊躇いなど全くなかった。
「ルーベン。
他の連中も殺すしかないのか?
殺すのは幹部だけでもかまわないのか?」
「一人でも生かしていたら、そいつを使って悪事を続けさせて、甘い汁を吸おうとする貴族士族が現れるかもしれません。
何より解放される女性が、こいつらに付きまとわれる可能性があります。
ここでの事を知っている犯罪者は皆殺しにしておいた方が、解放される女性は安心するでしょうね」
「分かった。
だったら皆殺しだな。
一人も逃がすねよ」
ルーベンはわざとギュンターに殺人をそそのかすような事を言った。
そう言わなければ、幹部以外は解放しようとしてしまうのがギュンターだ。
ギュンターのよい所も悪い所も、全て知っているルーベンだった。
知ったうえで、ギュンターの下で働いていた。
その気になれば、直ぐにギュンターを追い抜いて、班長や組長になれる才知溢れるルーベンだが、ギュンターに惚れこんでいた。
その頃、居酒屋のアンナも動いていた。
今まではひっそりと生きるつもりでいたアンナだが、もうそれが許されない事を理解し、老いた養父母を守りつつ、積極的に居酒屋を広げ、手広く商売をする事を決断していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます