第25話

「アルフレット様。

 この刺青の復讐をしたいのです。

 復讐することで、人族の中でも特に下劣な者共を滅ぼすことができます。

 許可していただけないでしょうか?」


「……庶民に被害を与えないように。

 分かっているだろうけど、人族の中には魔族の血を引く者もいる。

 絶対に皆殺しにしてはいけないよ」


「はい、約束します。

 皆殺しにはしません」


 アルフレット様が、私を側室にしてくださると約束してくださってから、もう五年の月日が経ちました。

 忙しい日々でしたが、魔族の人達にアルフレット様の婚約者と認められた、とても幸せな日々でもありました。


 五年間で、地下シェルターに避難していた多くの魔族が発見されました。

 彼らを助け、蘇生させました。

 大陸中を探し回って、隠れ住んでいた魔族を助け出しました。

 巨大な魔都も、魔族の増加と共に完成しました。

 まだまだ過疎状態ですが、魔獣養殖用の坊は、魔獣で溢れています。


 何よりも大きかったのは、人族の中に魔族が隠れ住んでいる事が分かった事です。

 比較的隠しやすい身体的特徴の魔族は、それを切り落として人間に偽装して、目立たないように暮らしています。

 人間の中に、薄く魔族の血が流れている者が、一割ほどいるのも分かりました。

 だから時に、先祖返りで魔族に姿に生まれる者もいるのです。

 そんな者の多くは、生まれて直ぐに密かに殺されてしまいます。

 ある程度余裕があり、両親に愛がある場合は、魔族に生まれた子供を匿う家もあるそうです。


 それもあって、私は決断しました。

 私を罠に嵌めた王侯貴族を、できるだけ残虐な殺し方をする。

 多くの国に魔族の強大さを思い知らせる。

 そして全ての人間の国に魔族の大使館を置き、隠れ住んでる魔族や先祖返りの魔族を助ける。

 そんな汚い駆け引きを伴う交渉は、魔族の方にはできないのです。

 本当に心優しい方々なのです。


「ギャアァアア!

 許してくれ!

 悪かった、私が悪かった!

 だから助けてくれ!

 殺さないでくれ!」


 ジェイコブ王太子が命乞いをしています。

 いえ、今は父王を殺して王になっていたのでしたね。

 父のオリバーも、私に向かって何か言っています。

 念願の王妃になった妹のイヴリンが、鼻、唇、耳を食いちぎられた無残な顔で、私に命乞いをしているようです。

 何度か治療して、また魔鼠に喰わせましょう。

 その方が苦しみを長引かせることができます。


 王宮中で泣き叫ぶ声が聞こえます。

 全員が命乞いをしていますが、許す気は毛ほどもありません。

 お前達のような汚い人間は、地獄の苦痛に苛まれて死ねばいいのです。

 そのために弱くて小さい魔獣を選んで連れてきたのです。

 魔鼠に喰い殺されればいいのです。


 この調子で幾つかの国を滅ぼせば、全ての国がこちらの要求を飲むでしょう。

 できるだけ抵抗する国が多ければいいのです。

 それだけ魔族の領地が増えます。

 隣国に近い貴族城を最大魔法で吹きとばせば、隣国にも私の恐ろしさが伝わるり、私を恐れるモノが増えてくれます。

 魔族の方々、いえ、アルフレット様のために、極悪非道な魔人間カチュアの名をこの世界に広げてみせます。

 

 

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