第3話

 私は、穏やかな生活を送れています。

 誰かが放った刺客は私のもとに訪れることなく、未開地の獣に喰われました。

 あっけない最後ですが、弱肉強食がこの世の常です。

 気にする必要もありません。

 私は魔境の奥深くまで入り込みました。

 私が知るキャンベル王国の誰一人入ってこれない奥深くまでです。


 私はそこで思い出した魔法を使いました。

 特に問題なく使えました。

 精霊魔法を駆使して、樹木を変化させ、木の庵を完成させました。

 そのために、奥に向かう途中で食用の樹木を確保していたのです。

 他人から見れば、奇怪な樹木に見えるでしょう。

 多くの樹木を合成して捻じり育て、四階建ての家にしています。


 しかもただの樹木の家ではありません。

 家の中に、果実が実るようにしてあるのです。

 春には柑橘類とキウイ、サクランボとビワが実ります。

 夏にはウメとモモ、マンゴーとアンズ、ブルーベリーとライチが実ります。

 秋にはブドウ類とナシ、リンゴとイチジク、クリとカリンが実ります。

 冬には数多くの柑橘類が実ります。


 しかも樹木の家の外壁には、草花の果実が実ります。

 春にはベリー類と瓜類が実ります。

 夏には瓜類が実ります。

 まあ、魔法を使えば、何時でもどの季節の果実も実らせることがでますが、魔力を無駄にすることはありません。


 いつどのような敵が現れるのかもしれないのです。

 自然に霧散してしまう魔力を無駄にせず、魔晶石を創り出して蓄えておくのです。

 昔の知識を活用すれば、魔晶石を創り出す事も簡単です。

 ですが特に何事もおきませんでした。

 刺客が放たれなくなったのか、刺客がここまでたどり着けないのか、そんな事も分かりませんし、分かる必要もありません。


「誰ですか。

 でてきなさい」


 平穏な生活は終わりました。

 私の庵に、まあ庵というような小さく粗末なモノではないのですが、誰かがやってきたのです。

 魔法の反応は、凄く弱々しく小さいモノでした。

 刺客が半死半生でここまでたどり着いたのかもしれません。


 確認に出たのは単なる気紛れでした。

 放っておけば、そのまま死んだことでしょう。

 誰であろうと、前世の有力な魔法使いであろうと、私の庵に入るのは不可能です。

 それくらい鉄壁の防御を施しているのです。

 私は庵の中で刺客が死ぬのを待てばいいだけだったのです。

 本当になぜ私は庵の外に出て声をかけたのでしょうか?


 ドサッと、人が倒れる音がしました。

 私は慎重に近づいて確認しました。

 そこには、とても懐かしい種族が倒れていたのです。

 魔族です!

 この人生では滅んだと聞いていた魔族が、私の目の前に倒れていました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る