第7話
「なんと凄まじい!
これほど強力な魔獣が姫様を護ってくれるのか?」
「当然です。
アカとアオは私の友達ですもの」
ジョージが眼を剥かんばかりに驚いています。
乳母のエミリーと乳姉妹のソフィアが恐々みています。
それもそうでしょう、アカは巨大な魔獣を一頭で狩ったのです。
アオは私の側にいて護ってくれています。
アカが狩ったのは、禽竜と呼ばれる体重が四トンもある亜竜種です。
古代竜や純血竜は別格にしても、属性竜や亜竜だって人間が狩れるようなモノではないのです。
数百年に一度、英雄勇者というかたが現れ、その方が多くの豪傑を仲間として初めて狩るか、それとも武運拙く殺されるかの相手なのです。
それを、あのように一撃で首を跳ね飛ばすなどありえません。
「ジョージ、あの竜は売れるのですか?」
「はい、とてつもない値段で売れます。
亜竜種は滅多に狩れるモノではありません。
体重が百キロに満たないような小型の地竜種であってもです。
それが今回は体重四トンと言われる禽竜です。
オークションにかければ八千万はくだらないでしょう」
八千万?
小銅貨で八千枚という事でしょうか?
大白銀貨で八枚ですね。
一般には白金貨など出回っていませんから、小金貨で八千枚と考える方が分かりやすいでしょう。
高給取りと言われる大工の日当が小銅貨四百枚と聞いたことがありますから、相当な額なのでしょう。
「では半分は騎士団の費用に使ってください。
残り半分は父上に届けてください」
「それはいけません。
絶対にダメでございます」
「何故ダメなのですか?」
「騎士団の費用は騎士団自身が狩りで稼ぐのが定法でございます。
それくらいの事ができないようでは、騎士とは名乗れません。
ですが殿に半分届けるというのは、よき思案かと思われます。
殿に半分届けられ、残りの半分はお嬢様の勝手向きに使われてください」
困りました。
私の勝手向きに使えと言われても、特に欲しいモノなどありません。
多くの侍女や召使を侍らせる趣味はありませんし、装飾品にも興味はありません。
領地のために使ってもらえれば一番だと思って、騎士団と父上に使ってもらおうと思ったのですが……
「ジョージ、私はこの城の城代でしたね?」
「はい、さようでございます」
「だったら城代が城のためにお金を使うのはおかしくありませんね?」
「……おかしくは、ありません」
「城の修理や増強は、領民のためにも大切な事ではありませんか?」
「……大切な事でございます」
「ならばジョージに命じます。
マクリントック公爵家のため、王国のため、城を強化してください」
「……殿の許可がでれば、そのようにさせていただきます」
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