第15話 ある日の夜

「「ただいま」」

そういって玄関の扉を開けた。出迎えてくれたのは月咲だった。まあ言われることは予想がつく。まあいつも通りだろう。

「お帰り。どうだった?二人の服装は?」

「やっぱり、知っていて帰ったよな?」

知っていることについては帰った時点で何となく予想がついていた。

「何についてだ?」

「白状しろよ」

ここまではテンプレ。いつも通りだ。俺はわかっている。

「まあ当然だ。知っている」

「白状が珍しく速いな」

「かわいかったよね」

と、横から紅葉が口をはさんできた。

「まあ、可愛かったよな」

「やっぱり、そう言う趣味なんだな」

「はぁ。もうそれでいいよ。否定するのはもう疲れた」

「否定しないってことは…」

「もうそれでいいから」

「ほぉ」

もう、否定するのもめんどくさいなぁ。毎回同じことを言っていて楽しいのかな?

「翔!どこ行ってたの?」

奥の方から都逢ちゃんが軽く駆けてきた。

「ルナとミミちゃんのいる猫カフェに行っていたの」

「あそこは来るなって言われてる」

ルナに言われたのだろうか?きっとそうだろう。

「ルナちゃんに言われたの?」

少し元気がないような感じでこくりと首を縦に振った。

「なんて言われたんだ?」

「お前が来るとめんどくさいから来るなっていわれた」

ルナは都逢ちゃんのことを嫌ってるからな。だからかな?もし言ったらって考えると、

「何その制服。可愛いのはルナに似合わない」

「は?喧嘩売って…」

「ん?」

家だとルナは都逢ちゃんより立場は強い?けど、流石に店だと店員と客という立場になってしまい、都逢ちゃんが威張ってしまうからってことかな?単純に嫌ってるだけ?それともほかの理由?まあそのことはいいや。

「そう言えば月咲はともかくとして、都逢ちゃんまで俺たちを迎えに来たの?」

「あ、これ。今日学校で描いたの」

見せてきたのは寮の絵だった。小学生にしては、うまい方なのかな?俺は絵も苦手だったからな。

「上手なんじゃない?」

「あれ?そう言えば一人で帰ってきたの?」

「ううん。ルナとミミが一緒に帰って、ここで別れたの」

「それなら、犯罪とかは起こりにくいね」

「それはどういう意味ですか?」

うぉ、びっくりした。急に後ろから来るなよ。まあ気づかなかったのも悪いか。どういう意味って、そのままの意味だよな?変な意味にとったのだろうか?

「お、ルナか。あれ?この後はシフトないの?」

「ないですよ。で、どういう意味ですか?」

「集団で帰っているから危なくないってことだよ」

「ルナがいれば誰も近づいてこないでしょ」

「都逢ー」

「あ、ミミちゃん。おかえり」

「ただいま。翔にー疲れたー」

「休む?」

「うん」

ルナと都逢ちゃんはどこかに走って行ってしまった。まあ寮の中にいるだろ。そこは気にしなくていいか。あ、紅葉も行くのかな?

「紅葉も俺の部屋で休むか?」

「いいの?」

上目遣いでいてきたのだが、そんなに気を使わなくていいのに。血はつながってないけど兄弟なんだし。

「気を使わなくていいよ。もちろん、ミミちゃんも」

「うん」

嬉しそうに返事をしたのを聞いてから、部屋に向かった。

「ねえ、しょうにー膝座って良い?」

「いいよ」

もちろん。断る理由などないので許可をした。

(いいな…)

「ん?何か言ったか?」

「な、何も言ってないよ!」

少し焦りながら言ってしまった。それには気づかないようだった。

何か言ったように聞こえたが紅葉が言ってないって言ってるし、まあいいか。

「なんか面白い物ないの?」

少しの間沈黙をしていたがミミちゃんがその沈黙を破った。破ってくれる方が助かったのだが。

「え?面白いもの?俺は何もないかな。紅葉は何かある?」

「私は特にないよ」

「あ、ミミちゃんができるかわからないけど、大乱闘スマッシュシスターズやる?」

「スマシス?あれ欲しかったの。都逢ちゃんも言ってたよ!」

「ん?じゃあ呼んでくるか」

「私が行ってくるよ」

「ん。そうか。じゃあお願い」

俺の膝から立ち上がり、部屋を出て行った。

「なあ、紅葉」

「どうしたの?」

「いままでの生活と、この寮での生活。どっちが楽しい?」

「急にどうしたの?」

「後悔してないかな。って」

少し間を開けてから質問を返してきた。

「お兄ちゃんは?」

「俺か?俺は後悔はしてないよ。紅葉と2人でも十分楽しかったけど、寮だともっと楽しいし」

「うん。私も同じ。みんなと一緒で楽しいもん」

「だよな」

紅葉も俺と同じ気持ちのようだ。公開なく毎日が楽しい。それっていいことだよな。そろそろ、戻ってくる頃かな?

「翔!スマシス持ってるって本当?」

「え、本当だけど」

「やらせて!やらせて!」

「もちろんいいけど、紅葉もやるか?」

「え、やるやる!」

「八人までできるから、ほかの人たちも呼んでくるか?」

「だったらでかいとこでやらない?リビングとかさ。ねー」

「うん。いいと思うよ!リビング行く?」

「じゃあ行くか」

俺は本体。3人はコントローラーを持ってもらっている。まあ6個もないけど、下に行けば何個かあるから数は問題ないのだが。あれ?何個か電池入ってなくね?大丈夫か?まあこの寮にはあるだろ。多分…下に行ってから、セッティングが終わり、できるようになってから月咲を呼びに紅葉とミミちゃんで呼びに行った。ルナは下のところで飲み物を飲んでいた。2ℓのペットボトルや紙パックのやつは共通で誰でも飲んでいいのだ。

「よし、始めるか」

俺がそう言ってからみんながコントローラーを持ちテレビ画面を見ている。あ、電池については心配がなかった。充電式が多く、電池は六つで済んだ。

「お!」

ミミちゃんが無言で俺の膝に座ってきた。別に嫌というわけではないのだが、つい声を出してしまった。まあ体を少し傾ければ見えるから問題ないのだが。

「ミミばっかりずるい!」

「じゃあ半分どうぞ」

左足にミミちゃん。右足に都逢ちゃん。二人とも軽いから重いというわけではないのだが、画面が見えない。ルナが意外にも集中してこちらには何も言ってこない。月咲は目があったのだが何も言わなかった。せめて何か言えよ。心の中でそう思ってしまった。紅葉はたまにこちらをちらっと見てくる。なんかあるのか?

ゲームを30分くらいやった後、紅葉と月咲とルナはキッチンに向かった。

「あ、ごめん手伝うよ」

「いや、いいよ。運ぶのと、片付けだけをやってくれれば」

「そうか。悪いな」

そのあとはマリナカートなどをやり食事の時間までをつぶした。今気が付いたのだが、右にミミちゃんが来ていて、左に都逢ちゃんがいた。

「おーい3人とも。料理で来たぞ」

体感では20分くらいだろうか?そのくらいの時間で料理ができていた。いつも通り早くておいしそうだな。ここの皆は作るの上手いな。俺も皆に習おうかな?いくら習ってもここまでおいしくはできないだろうけど。

「おぉ。今日もおいしそうだな。これは…ハンバーグ?」

「うん。そうだよ!」

そう言えばぺったんぺったんって聞こえたな。それがそうか。

「タレはあるの?」

「タレ?」

「あ、忘れてた…」

「まあタレがなくてもおいしいんじゃないかな?」

「タレならテーブルの上に置いてありますよ?」

「タレって途中で入れるものなんじゃないの?」

「つける量を自分で調節できた方がいいと思ったからな」

「それなら納得」

「ねえ翔にー、大根食べて」

「自分できちんと食べなさい!」

「翔にー意地悪」

「意地悪してるわけでは。都逢ちゃんは食べられるの?」

「当たり前でしょ!私が食べれないわけないでしょ」

「はい。それじゃあ食べよう!いただきます!」

紅葉が話が終わったのを見てから、途端に声を皆にかけた。昔からそういうところに気が回るよな。

「「「「「いただきます」」」」」

と言った途端に都逢ちゃんは上に乗っかっている大根を口の中に入れた。おぉ、食べれる…わけではないのか。おいしくないって顔に出ているな。

「じゃあお姉ちゃん食べて」

俺がダメって言ったからって今度はルナにか。まあ流石にルナだって良いとは言わないでしょ。

「いいよ」

聞き間違えたろうか?いやはっきり聞こえた。「いいよ」と。

「ミミちゃん。きちんと食べたほうがいいぞ。大きくなれないよ」

「おい。翔。それはセクハラ発言か?大きくなるって」

「何がだよ!」

何がかは分からなかったが一応つっこんでおいた。また後から言われないようにな。でも何がだったのだろう?まあそれはいいか。

「うん。頑張って食べるよ…」

「えらい!いい子」

「えへへ」

頭を撫でてあげると嬉しそうにしてくれた。

「翔!私も食べたよ!」

「あ、そう?偉いな」

そう言って頭を撫でてあげる。途中まではいい感じだったのだが急に離せと言ってきた。急になんだ?恥ずかしいのか?恥ずかしがる必要ないのに。

「離して…」

「お、おう」

そう言われたので手を離した。そのあとは飯が食べ終わるまでみんなが会話をした。

「ねえ、翔にー。一緒にお風呂入らない?」

「いいよ」

「おい。小さいこと入って何するつもりだ?」

「何って…ただ風呂を入るだけだが?紅葉とも入っているし問題ないだろ?」

「いや、妹と入るのとそれ以外の子とでは違うだろ」

「てか、この年齢になっても一緒に入っているのですか?」

「悪いか?」

「そういうわけでは」

他から見たらおかしいのかもしれないけど、紅葉とは入る。まあこの前はなぜか照れていたけど。いつも見てたのに。いや、見てはいないか。見てないぞ?

「そうか?それじゃあやめておくか」

「紅葉、一緒に入るか?」

「うん。入る!」

嫌がっていたりはしていない様子なのでそれは良かった。まあ一度も嫌がったことはないがな。多分だが。

「誰が最初に入るんだ?」

「私たちは後から入ります」

ルナがそう言うと月咲も

「悪い。先は言ってくれ」

そういわれたので紅葉と先に入ることにした。長湯はしない方がいいかな?まあそこは大丈夫であろう。

「部屋戻って着替え取ったら先に入ってるぞ」

「うん。わかった」

部屋に戻り着替えなどを持ち、洗面所で服を脱ぎ、頭を洗い終わったころ、紅葉が入ってきた。

「入るね」

そう一言だけを言い椅子に座った。

「あ、久々に髪の毛洗おうか?」

「いいの?」

すこし遠慮気味に言っている。

「だから遠慮するなって」

やっぱりサラサラだ。黄緑色のサラサラの髪。ごしごしとしてあげる。

「流すのは自分でやるか?」

「うん」

小さいころは絶対に一緒に入っていたせいか、最近では一緒に入らないとちょっと寂しく感じてしまう。まあ昔は紅葉が一人じゃ入れないから毎日入ってたしね。お互いに大きくなってきたから、お風呂が狭く感じてしまう。それもしょうがないことなのだろう。

「お兄ちゃん。背中流すよ」

俺がそんなことを感じていると、背中を流すと言ってくれた。

「ん。じゃあお願い」

両手でやっているのだろうか。手の体温が伝わってくる。

「痛くない?」

「痛くない。気持ちいいよ」

いい感じの強さでやってくれている。意外にも背中をこうやってもらうのは初めてかもしれない。

「紅葉も大きくなったな」

「え?そういうの気にするの?」

「声に出てた?成長したなってこと」

そういうのって。何?手を胸で押さえながら……て大きくなったってそういうことか。とある部位が大きくなる。月咲はそれが言いたかったのか。今わかった。多分俺の顔はのぼせたのではないか?というくらい赤かった。

……しばらく無言のまま時間が過ぎて行った。

「そろそろ俺上がるから」

そう一言だけ言って風呂を出た。って俺は妹で何を妄想しているんだよ。ダメだろこんなの。あいつの言葉がさっきから引っかかるな。

リビングに戻るとルナとミミちゃんが座っていた。

「紅葉が出たら入っちゃいな」

「途中から声が聞こえなくなりましたが何かありました?喧嘩ですか?」

「え?聞こえてたの?」

「何を言っているかは聞こえませんが、声を出しているか出していないくらいは静かならわかりますよ」

内容は聞かれていないで良かった。聞かれていたら終わってたな。多分。ここでいじり倒されていたな。

「ふぅ。ルナちゃん。ミミちゃん。入っていいよ」

「はい」

「うん」

「お兄ちゃん何話していたの?」

「ん?とくには」

今の今まで気が付かなかった。いや気にしなかったが、ブラをしていない。これは…

「耳貸してくれ」

「ん?」

疑問に思いながらも耳を貸してくれた。

「いや、やっぱり何でもない」

「気になるじゃん。言ってよ」

「絶対変なまで見られるからいや」

「変なことなの?」

「わかった。いうから耳貸してくれ」

もし気が付いてなくて外に行ったら大変だし。これが言いたいことなのか、いいわけなのかは自分でもわからなかった。

(ブラしてないのか?)

「え?夜はしてないよ?」

「そうなのか。いつもならいいんだ。忘れているかと思った」

「夜は流石にしないよ」

変な目で見られることはなかった。

「あ、皿洗いしないと」

完全に忘れていた。もしかしたらと思ったが、ミミちゃんと都逢ちゃんも忘れていたらしい。

「私も手伝おうか?」

「いや、いいよ。料理を作ってくれたし」

「私が手伝いたいの。手伝わせて」

そう言われたらダメとは言えない。まあ手伝ってくれるのはうれしいからここは素直に、

「ありがとな」

頭を撫でたい。だが撫でたら怒るかな?やめておくか。

「ふぅ。終了」

「二人でやったからあっという間だったね」

「ああ。もう一度お礼を言っとくよ。ありがとう」

「別にこれくらい大したことないって」

部屋に戻って布団で休むか………



「おはよう」

「ん?月咲か。もうそんな時間か?」

「いやまだ9時半だ」

「寮の消灯時間は十時。それより早く寝ることの方が多い。月咲は俺に用があってきたらしく部屋を訪れたようだ。だが肝心の俺は寝ていたので、しかも布団がかかっていなかったらしく布団をかけようとしているところで俺が起きたようだ。

「俺に用って?」

「今週末までならいつでもいいから、明日にするから」

「お、おう」

俺は月咲が部屋を出ていくのを見てからゆっくり眠りについた

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