5,毒と薬

ルーナ・ウォーノック


攻略対象の一人でヒロインの義兄。


父親の髪色と母親の白縹の瞳を受け継いだ。


美しい満月の日に産まれた彼は人形のように美しい。


学園でもその見た目から注目されていた。


本人の性格は誰にでも優しい。


だが、ゲームではヒロインに対してきつく当たっていたものの


ヒロインが記憶をどんどん取り戻すにつれ優しくなるらしい。


私が持っている情報はそれぐらいだった。


本人を前にして私はそんなことを考える。




バサラブさんがいなくなってしばらくして突然ドアが開いた。


髪色はさっきと同じ、だけど慎重が小さくなったのをみて


ルーナが入ってきたとわかる。




「へぇ、君がね」




笑っているように見えるが目が笑ってないことは誰でもわかる。


この人、心の中身全く見せる気かない。


どうやって育ったらこうなってしまうのか。


ゲームをやっていたらわかったのかもしれないがそれをいっても仕方ない。




「記憶がないとか、変な人間だね」




心をえぐるような声


ひとつひとつが毒のように蝕んでくる。




この人、危険だ。


一体なぜ攻略対象に選ばれたのか不思議でならない。


味方にしたら強いかもしれないが、敵でいるうちは危険だ。


記憶を取り戻せば、味方になるのか?


それならほんとに早く、思い出す必要がある。




「ねぇ、なに黙ってるの?」




幼少期は皆こんな感じになるのか?


どうしよう、なにか話さないといけないのに


声が、出ない。


からだが縛られてるように動かない。


思考がどんどん働かなくなっていく。




「君もあいつと一緒になっちゃったんだね」




あいつとは誰だ?


しかも過去形?


前にあったことがあるのか。


ヒロインは一体どれだけの情報をゲームで公開しているのだろうか。


ゲームをしていたらわかることなのだろうか。




「あーあ、もう知らない


元気になったらいつか話そう」




そういってルーナは立ち去った。


私はドアの閉じる音と同時にまた眠りについてしまった。










「どう?皆にあえた?」




サナの声がして気がつく。


サナは少し心配そうな顔をしていた。




「大丈夫、一人だけ会えなかったけど、それ以外は」


「そっか」




優しい冷徹な人


美しい毒を持つ人


あと一人はどんな人なんだろう




「ここで残念なお知らせです」


「え、唐突」


「君が17歳になるまでサポートつけなくなりました!」


「なぜ?!」




いやいや、ここでいなくなられるのは困る。


学園に入るまでの間にどれたけ準備が必要だと思っているのだ。




「ほら、あんまり干渉するとシナリオかわっちゃうし」


「いや、いいじゃないか!!」


「だから干渉じゃなくて、観賞するね」


「わかりにく!!」




いや、文字に起こさないとわからないやつだよ。




「文字にしないとわかりないシリーズ」


「話がそれているが面白い、やろう」




「人にかんしょうされる」


「干渉されてイラついているのか、はたまた観賞されているのかわかりにくい!!」




「病人をかいほうする」


「いや、それは確実に介抱するでしょ」


「状況が立てこもりをされた病院なら話は別だよ」


「いや、解放したらやさしすきだろ」




閑話休題




「それで、どうだった?」


「いや、上手くいける自信0」


「まじでか」




うん、全く自信がわきません。




「あれだよ、今君のからだ熱出てるからだけだよ」


「熱出てたのか」




通りでからだがだるかったわけだ。


話せなくても仕方ない状況だったじゃないか。




「ほんとはサポートに回りたかったんだけど今忙しくて」


「何かあったの?」


「震災が発生してそっちの方でバタバタ」




天界も自然にはかなわないらしい


いや、そこは神様の力でなんとかしなさいな。




「まぁ、あれだよ」


「どれだよ」


「なんとかなるよ」


「無責任な発言だなぁ」




なんとかなるのだろうか。


私が記憶を取り戻すきっかけがわかればいいのだが 




「ごめん、忙しいからまた今度」


「え、もういくの?」


「いい夢見る時間を差し上げよう」


「いや、話してる方がいいんですが?!」


「バイバーイ」




神様に逃げられた私。


仕方ないので大人しく夢を見ることにした。








<おまけ(?視点)>




静かにドアを開けてはいる。


そこには一人の少女が寝ていた。


数時間前から家族になったその子。


昔はよく仲良くしていたがここ三年近くあっていなかった。


あの事が原因で記憶を失ってしまったらしい。


極度のストレスによりきれいだったブロンドの髪も一部を残して白くなってしまった。


静かに寝ている姿はまるで死んでしまったみたいだった。




「熱があるのか」




彼女に静かに触れる。


ものすごく熱い体温に驚いてしまった。




「ヒール」




彼女は光に包まれる。


体温はもとに戻り静かに眠っている。


彼女が記憶を取り戻したときまた話してくれるだろうか。


あの頃のように3人で遊べるだろうか。


君と離れてから僕たちはバラバラになってしまった。


それを君は再び結びつけてくれるだろうか。




僕にとって君は光なんだ。


だからどうか、あの頃のように







あとがき

次の更新は木曜日の午後7時です

水曜は次の日が受験なのでばたばたなのです。

おたのしみに



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