Last dance は勇者(キミ)と踊りたい

@tama0914

0.終わりで始まり

私が好きなこと、それはゲーム!


パズルとか乙女ゲームとかいろいろやったけれどその中でもRPGが大好き!


自分でないものになって戦うのもあり。


勇者を育てて世界救うのもものすごく楽しい。


自分の好みの装備、見た目にしてネットの仲間と協力して戦うのは


現実を忘れられる最高の瞬間だと思う。




最近、ものすごくはまっているゲームがある。


もちろんRPGだよ。


主人公の勇者の仲間になって一緒に戦うものなんだけど。


家で好きなゲームがアニメ化した時にながれたCMでたまたま見かけたこのゲーム。




「俺は絶対に生き抜いてやる!」




勇者のその声、見た目に一瞬で惚れた私はすぐにゲームをインストールした。


今ではランキング戦も上位に常に居続けるいわゆるガチ勢である。


今週は来週から新ストーリーが発表されることもあり伝説の龍の盗伐イベントが開催中。


私は魔導騎士のキャラを使って主人公をサポート中。




「またそれやってんの?さすがガチ勢」




そう言ってきたのは私の数少ない友達、咲菜さな。


咲菜もゲーム大好きだけど、RPGより乙女ゲームに恋してる。


私もやったことはあるけれど全然楽しみが理解できなくてすぐにやめてしまった。


咲菜とはいつも学校で仲良くゲームしてるけど開いてる画面は全く別。


話もかみ合うようで少しずれがちなことが多かったりする。




「乙女ゲームのどこら辺が好きなの?」


「あれはね…トキメキなんだよ」


「いや、真剣に言われて意味わからんわ」




RPGとは違いストーリーをただ読み、選択していくのが私はつまらなかった。


まず、三次元にも二次元にも恋愛要素をもとめてないのだ。


だけど咲菜はすごく楽し気に話す。




「乙女ゲームをやるとね、三次元の男なんてただの草よ。


見た目、性格、声、全てが理想な上に理想な自分で理想な世界!


是非、二次元に行きたい!行けるなら何でもするレベル!」




私にとってはあの世界はそういうものだろうか。


勇者様は確かに大好きだが、何としても行きたいわけではないしなぁ。


けど、もし会えるなら会ってみたいかも。


…って何言ってんだか




「ばかばかしい」


「とか言いながらおぬしは何してるんだ?」


「え、青龍退治」


「歩いてるんだから前向きんしゃい。


携帯を今すぐしまいやがれ。」


「心配するな。オートだからな!」


「羨ましい!!」




いやいや、乙女ゲームオートでやっちゃったら楽しみ無くなるよ?


家着くころにスチル終わっちゃうよ?


話読まずして何のためにそのゲームをしてるんだい。




「あー、家帰りたい」


「今帰ってるでしょ」


「知ってた。…くそっ、瞬間移動の使用許可さえ下りれば!」


「あってもできないがな」


「それな」




なんて実のない会話だ。


まぁ、私たちはいつもこんなノリだな。


というか、全国の高校生、しょせんこんな会話しかしないよ。


こうやって語彙力低下の道を進んでいくのだ。


いや、それはまた別か。


なんて言ってたら体力半分削れてるし。


自軍の回復と、攻撃魔法の種類変えようかな。




杖を持ちかえて違う技を取り入れる。


勇者のスキルがまだ低すぎたか?


家帰ったら一回分析してスキルをあげるのと覚醒第二段階踏むためのカードでも集めるか。


RPGは終りがないから楽しい。限界が常に更新されていく。




「ほれ、前向かんか」


「うい」


「そんなんだから成績が下向きなんだよ」


「それを言うな、学年トップ」


「推しへの愛が私の学力を強くする!」


「レベ上げしやすそうだな」


「きっと綺あやもやったらわかるよ」




それで上がるなら全国の女子高生やりまっせ。




「・・・トキメキ、たりてる?」


「だまらっしゃい」




横をあるいていた咲菜が私の前に出て振り返る。


ここ、道幅狭いんだからきをつけないと。


ガードレール、いい加減設置しないのかね。




「そんな君に、この『Lost Time』を紹介しよう!」


「結構です」


「いや、まずは聞こうよ」




『Lost Time』は咲菜が最近やり込んでいるスマホの乙女ゲーム。


普通のアプリとは違い無課金でストーリーがものすごく読めることで最近はやっている。


ストーリーもまだすべて上がっているわけではないので多くの女子が楽しみにしてる。


イベントも豊富でフルボイスな上にキャラが動くのも人気のきっかけになっている。


さらに、ヒロインには公式の名前がついているわけではないので、


自分が設定した名前を呼んでくれる。


つまり、推しに自分の名前をよんでもらえるのだ。


やってもいない私がこんなに詳しいのは毎日咲菜のを見ているからなのだけれど。




「おねが~い、一緒にやろうよ」


「後ろ向かず前見なさい」


「やだね」




いや、本当にけがしちゃうから!


乙女ゲームスイッチが入ると本当に面倒だ。




けれど、こんなにふざけてられるのもあと数ヶ月。


もう少しで高校3年生になる私たちはゲームと少し別れなければならないのだ。


こんな風に楽しい会話が出来なくなってしまうのだ。


それはそれで少し寂しいとは思う。




「私の推しはどこにいるのだー!」


「いや、呼んでも

出てこないからね」




こんな感じで二人でふざけながら帰っていた。


もしかしたらいつもよりふざけていたのかもしれない。


歩いて帰っていることが当たり前すぎて


いつも通りの日常の一部過ぎて危機感がなかったのかもしれない。


すっかり忘れていた。


大きなショッピングモールの前の信号にいるということも。


信号が点滅するのがここは早いということも。


駆け足で歩かなかった私たちは判断を誤ったのだ。


互いに周りを見ていなさすぎた。


横を通る会社員の人も、向かいにいる子供連れの親も。


いつものようにそこにある木も、建物も、空も、ただよう空気でさえも。


そして、横から突っ込んできた車にさえも。




現実はいつだってどんなゲームよりもイベントにあふれてる。


運営という神様の連絡なんてありもしないけれど。


毎日、学校や家での生活という日常イベントとテストや学祭の期間限定イベントで。


では、これは何て言うんだろう。


神様、イベント前にはメンテナンスと事前連絡をください。


そんなんだと、ユーザー減りますよ。




「あや!!!」




そんな声が聞こえた気がする。


だけどもう遅すぎた。


私はイベントに強制参加されられたのだ。


参加資格を持っていたのだ。


私の意識は車のヘッドライトに溶けていった。




こうして私は人生の終わりとイベントの始まりを同時に申告されたのだ。


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