しろで包む

ぱんにはむはさむにだ

01 サヤ/沙耶

「牛乳飲みたい」

あんぱんを食べるといつも思う。ううん、甘いものを食べると、かも。口の中に、舌のまわりに、へばりつくように残る甘さが気持ち悪くて耐えられない。お茶やコーヒーでも拭い去ることはできるのだけど、牛乳の、口の中の甘いそれを大切な宝物のように包み込んで、喉の奥へ、私のからだの奥へ導いてくれるところが好きだ。

「健司、牛乳は?」

隣を見ると、購買で買ってきた130円のボリュームたっぷりたまごサンドを食べながら、今人気の漫画をやたらと熱心に読んでいる彼が視界に入る。私が食べているホイップクリーム入りのあんぱんも一緒に買ってきてくれた。

「え、ないけど」

健司は漫画に視線を落としたまま、さも興味が無さそうにそう答え、またサンドイッチを口に運ぶ。聞いているけれど、本当に聞いているのかあやしい。

「そんなん頼まれてたっけ」

「別に頼んで無いけど…」

もう長い付き合いなのに、気が利かない奴。あんぱんを買ってきてと言った時に察して欲しかった。私の好みくらい、覚えてくれてもいいと思う。

なんだか腹が立って、漫画にあんぱんを押し付けてやろうかと思ったのだけど、借りものだったら悪いので、そして何より、あんぱんが勿体無いのでやめることにする。仕方ないから朝買った麦茶で口をゆすぐ。これでまた、次の一口の、常温保存可能なホイップクリームと、ちょっと甘すぎるこしあんの入ったふわふわとは言い難いあんぱんが、美味しくなる。

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