22.4
久し振りにゆっくり本を読む時間が取れた。調べ物で書斎に篭ることはあっても、気ままな読書というのはいつ振りかも分からない程だ。
子供の頃、父に買って貰った本を見つけた。父に繰り返し読み聞かせをせがみ、しかし父は嫌な顔ひとつせず読んでくれた本だ。仲の悪い兄弟が、それでもお互いがいることで対等な喧嘩も叶うのだと、素直な気持ちをぶつけ合えるのは自分達が仲の良い兄弟だからこそなのだと気付ける話。昔はこの話を読んで、兄弟の存在に強い憧れを持ったものだ。
今は、兄のように思える人がいる。弟のように可愛がれる人がいる。友人にも恵まれた。一人でいた頃の寂しい気持ちなど、すっかり忘れていたくらいだ。
学校は、あまり好きではなかった。学ぶこと自体は楽しかったが、学友達の目が苦手だった。当時は何となく嫌われているのだとしか思えなかったが、今考えればあれは“何故ここにいるのか”という目だったのだろう。言ってしまえば貴族の通う学校に平民上がりがいたのだから、当然といえば当然かもしれない。彼らもきっと、彼らの親からは俺に近づくなと言われていたのだろう。未だ、貴族の中には平民と関わることを嫌う者がいる。
偏見をなくしたいと思う。貴族からのそれは勿論、平民から貴族への嫌悪も。俺一人の力では出来ることなど限られているが、それでも。平民であれ貴族であれひとりの人だ。どちらも知っている俺だから出来ることが、何かあるはずだ。せめて、周りの人間にだけでも、地位に関わらず手を取り合える関係を作って欲しい。そう願う。
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