9.4

 使用人達からプレゼントを貰った。

 昨日の俺を見て、こっそり町で買ってきたらしい。子供が生まれたらたくさん使うことになると、タオルと前掛けを。テオドールとヘレナからは、それとは別に子供服を。

 服は両親から送られていたから迷ったが、これ以外に思い付かなかったと申し訳なさそうにしていた。しかし、嬉しさでいっぱいだと出来得る限りの感謝を伝えたら、安心してくれた。


 俺は使用人達に対して、仕事を増やしてしまうと後ろめたく感じていたのかもしれない。それに気付くと同時に、その不安は拭われてしまった。彼らにも、こんなに思われていることが嬉しい。嬉しくて堪らない。

 俺達のこと、更にはまだ生まれていない俺達の家族のことも、大切にしてくれている。彼らは皆、誕生の日が待ち遠しい、早く会いたいと言ってくれた。会える日を望んでくれている。彼らの優しさに、たくさん助けられている。

 受け取った時にはヤンも一緒にいたが、ヘレナと抱きしめ合っていた。先輩が祝ってくれるのが嬉しいのだろう。皆への挨拶は、是非この服を着せたいと笑っていた。ヤンを笑顔にしてくれたことも、感謝しかない。


 以前、使用人達を含めて大きなひとつの家族のようだと書いたが、今日のことはまさに家族に祝われたという気持ちになった。家族として、恩を返したい。幸せを貰った分、俺も彼らを幸せにしたい。

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