2.4

 葬儀は滞りなく行われた。祖母も祖父と似た考えを持っていたからヤンに対し何か言われるかと思ったが、葬儀が終わる頃には来てくれて良かったと、祖父も喜んでいるだろうと言ってくれた。その言葉で救われた気がした。


 葬儀の後、珈琲を飲みながら話をした。アイヘンヴァルトとはすっかり疎遠になってしまって、伯父や従兄弟とも久し振りに顔を合わせた。祖父は少し前から急に癇癪を起こしたり、かと思えばひどく落ち込んだりを繰り返すことがあったらしい。妻を守る選択をして良かったのだと、従兄に背中を叩かれた。頻繁に会うことはなかったが、従兄は祖父や伯父より柔軟な視点を持っていて、ヤンや父に対しても嫌悪を抱くようなことはない。従兄の奥方は、ヤンと何やら話していた。きっと生まれてくる子や従兄の子の話だろう。上の子はもう八歳になるという。はきはきとした、しっかりした子だった。末の子はまだ人見知りが激しいらしく、俺の顔を見て泣いてしまった。奥方は、この数日で知らない顔がたくさん家に来たのだし、落ち着かないのは仕方ないことだと言っていた。

 部屋に戻る前に従兄が、子供がいるのは大変なこともあるが、幸せだと話してくれた。不安もあるだろうが、頑張れと。もし俺に兄がいたら、こんなふうに話したのだろうか。


 明日、ヤンと共に家に戻る。俺の覚悟などちっぽけなものだったと思い知った。この数日で感じたことは、一生背負っていくべきものなのだろう。帰ったら、ヤンとゆっくり話したい。

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