30.3

 あと三日ほど家を空けると、テオドールに連絡をした。俺は酷い人間だが、せめて孫として送りたいのもあるし、両親を放ってはおけない。葬儀までは、ここに残るつもりだ。

 ヤンには家にいてもらう。長距離の移動は辛いだろうと思ったからだ。ヤンの体のことを考えれば、この判断は間違いではないのだろう。

 確かに悲しい筈なんだ。俺に向けられた笑顔は、本物だった。祖父に愛されていた。俺も、祖父が好きだった。それは事実だ。事実の筈だ。もう会えないと思うと、悲しいし寂しい。


 本当だろうか。

 唯一愛した人の為なら、何だってする。そう思っていた。しかし、祖父を前にして、俺は中途半端だ。


 潰れそうだ

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