29.3
祖父が亡くなった。
最期に立ち会うことは出来なかったが、先に着いていた父に母を頼むと遺して逝ったという。
今、この日記は祖父の家の一室で書いている。
俺にとって優しかった祖父だが、父とよく喧嘩をしていたことを覚えている。その度に母に二人まとめて怒られていたことも。
最後に会ったのは結婚式かもしれない。ヤンと俺との間に家族が増えることも伝えてはいたが、それだって手紙で済ませてしまった。こんな時でさえ、会いに来れば良かったと素直に思えない自分が嫌になる。生まれに拘ると聞いた祖父がヤンのことを詳しく知れば、何を言うか分からなかったと、思ってしまう。ヤンを守りたいのは当然だが、それでも自分は、なんて冷酷な人間なのだと。
父は、泣いていた。祖父のこととなると嫌な顔を隠さなかった父が、母の肩を抱きながら、それでも泣いていた。両親や祖母を支えるのでいっぱいだったと言えば聞こえはいいが、俺は、泣けなかった。書きながら、未だ実感が湧いていないのもあるのだろうと自分に言い訳をしている。本当に、嫌になる。
曾孫を抱いて欲しかったとも思う。
妻のため祖父をも突き離そうとした自分と、曾祖父になって欲しかった自分と。どちらが本当の自分なのだろう。
分からない。
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