理想と現実はたいてい違う。

羽本ゆう

第1話 理想と現実

 

きらきらした青春を送るわけではない、いや送れるわけじゃない。

俺は知っている理想と現実は違うということを。


これを聞くとそんなの当り前じゃないかと皆が思うはずだ、だが俺が言いたいことはそんな辞書に載っている言葉の意味ではなくもっと現実的な事だ。例えば噂があったとしてそれにだんだん尾ひれがついて事実とはかけ離れるなんてことがある。


それはひとえに皆の憶測またはこうだったら面白いなどの願望が混じりやがて自分たちごのみの理想のお話になる。


だが俺は知っている現実にある真実はたいていつまらなくありきたりなものだと。


つまりフィクションの中の青春なんて言うのはこうだったら面白いという願望と理想の集まったものなんだから現実には起きない。


だから俺は今日がクラス替えの日でもいつもと何も変わらず平常運転だ。


クラス替えの日の通学路で美少女に会うだとかそんなフィクションの中の出来事が起きることはないから俺は期待もしない。

 

朝起きて山城やましろ家の主たる母親の美弥子みやこのオリジナル料理"美弥子スペシャル"を食べ、それから親友の拓斗と学校に行く。何一ついつもと変わらない日常だ。


優也ゆうやそろそろ拓斗たくと来るんじゃないの?」


時計を見ると7時50分を指していた。学校には8時半までには登校しなければならない通学に30分はかからないがいつも余裕をもって家を出ることにしている。


だからいつも待ち合わせは8時に俺の家に拓斗が来ることになっている。


「そうだね、そろそろ来るね」


「待たせたら悪いから早く食べな」


「分かった」


俺は残りの美弥子スペシャルを食べ終えて拓斗を待つことにした。


食べ終えてから少ししたらインターホンが鳴った。


「優也ー」


「今行く」


親友への応対は手みじかにして俺は母親にいつも言っている言葉を言って今日も学校に向かった。


外に出ると季節は春になったんだと感じさせられた春独特のにおい、春の陽気な日差しどれも俺に春を強く感じさせた。


そしてそれらの事が俺が水蓮すいれん高校に入学して2回目の春を迎えたんだと教えてくれた。


「今日はクラス替えだね」


「だなー、また一緒だといいよな」


「そうだね、小中高と一緒だしこのまま一緒だといいよね」


「それを確認するためにも早く学校に向かうか」


「そうだね」


俺と拓斗は1年間毎日通った通学路を今日も変わらず自転車で登校した。



学校についてみるとクラス表の前には人が群がっていた。


俺と拓斗はとりあえず自転車を駐輪場に置きクラス表の前まで行った。


クラスは全部で6組名前は名前順で書いてあるため俺も拓斗もだいたい下の方だだから片っ端から下のほうを見ていくことにした。


「二人で手分けしよう俺は6組のほうから探すから拓斗は1組からお願い」


「分かった」


 山城、、、三島みしま、、無いか。こっちにないっていうことは拓斗の方か


「こっちにはなかったからそっちにあると思うんだけど」


「あったよ、どっちも3組」


また一緒だったらしい普通に嬉しかった。


「これからもよろしくな


「こちらこそよろしく


俺らは自分たちのクラスに向かった。そこではもうすでにグループが出来ていた。


まぁ1年同じ学校で生活していたら同じクラスじゃなくても顔や名前を知っている奴なんているか。


俺も拓斗も自分の席について先生が来るのを待つことにした。


始業のチャイムと同時に先生が入ってきてすぐに自己紹介が始まった。


「今回このクラスの担任になった朝宮光あさみやひかりですよろしく。担当科目は音楽です。去年クラスを持っていた子や音楽の授業を取ってくれていた子は今年もよろしくねそして始めましての子はこれからよろしくお願いします」


なんとクラスに入ってきたのは俺と拓斗の一年の時の担任だった朝宮光先生だった先生には俺も拓斗もよくしてもらったし一年間同じクラスで学校生活を送ってきただけあって仲は良いからラッキーだ


「今日は新しくなったクラスでみんな知らない人もいるだろうから自己紹介そのあとに係と委員会それと遠足の班を決めてもらいます。自己紹介は出席番号の若いほうからにしようかな」


俺は山城だから一番最後だからほかの人の自己紹介を聞きながら自分の番を待つだけだ。

どうせ自己紹介をしたところで関わらないやつのほうが多いんだからざっくり見積もってクラスの一割くらい覚えとけばいいそれも目立ってる奴らを集中して覚えとけば学校生活で不要なトラブルに巻き込まれる確率は大幅に下げることができるはずだ。


自己紹介が終わり拓斗が目立つ奴をピックアップしてきたらしいので話を聞いたころ拓斗がピックアップしたのは四人。

ピックアップした中の唯一の男子、水嶋みずしまヒロトどうやらサッカー部で女子にも人気らしい。


次に明るくムードメイカーの愛葉優希あいばゆきこいつは俺と拓斗が一年の時仲の良かった奴だ見た目もよくフレンドリーなためモテルらしい。


葉月葵はづきあおい黒髪ロングに丸眼鏡なんだがいもくささは感じさせずむしろ清楚な感じを演出しているなにより学級委員みたいだと思ったらしい。


青木桃あおきももほかの三人に比べ見た目に派手さはないが可愛さと綺麗な感じを両立していて神聖なオーラが漂ってる!って拓斗が言っていた。


ピックアップした女子は俺でも知っていた何せこの学校の3大美少女と言われているからだ。ちなみにらしいと言っているのは拓斗の感想を聞いたからだ。俺自身あまりちゃんと聞いてなかったからな、ちなみに俺の自己紹介は無難に終わらせた。


「はい、みんな自己紹介ありがとうこれからこのクラスで2年間過ごすから楽しい高校生活だったって言って卒業できるような学校生活にしようね。自己紹介も終わったことだし次は委員会と係を決めたいと思います。学級委員を決めたらあとは学級委員に任せるね。学級委員やりたい人いるー?」


「私やります」


「俺やります」


立候補したのは葉月葵と水嶋ヒロトだったなんかやりそうにないのが一人いるけどまぁもう一人の女子はやりそうだなと俺は思った。

学級委員が決まってからは学級委員が指揮をとり他の委員会と係はすぐに決まった。

 俺と拓斗は総合係になった。


「学級委員の二人ありがとう次は遠足の班を決めます男女3人ずつの計6人班を作ってね班が出来たら先生に報告してね」


ついに来たこのめんどくさい班決めという名の戦が。ここで関わる事が出来ればこの先の関係性の発展にもつながるため必然的にイケメンやかわいい子の班の倍率はとても上がる。

だが残念なことにイケメンとかわいい子はたいてい同じ班になる。

これがリアル。悲しいかな。

俺は正直厄介ごとに巻き込まれるのは面倒なので余ったところに適当に入れてもらえれば何でもいい。


「班になりたい人のところに行って話しかけて班作ろうと頑張ってるねみんな」


「みんなじゃないだろ少なくともここに一人、どうでもいいから早く終わらせてくれって思ってる奴がいる」


「早く終わらせてくれには同感だね」


「なんだよ意外だな、てっきり自己紹介の時可愛いとかいってた人となりたいのかと思ったんだけど」


「ああいうのは遠くから眺めるに限るよ関わればそれなりに楽しいだろうけど面倒なことも付きまとってくるだろうからね」


「そういう事か、なら二人で適当に余ったとこに入るって感じでいいか」


「それでいいよ」


そんな話をしてクラスのはじほうにいた俺らだがなぜか余ったところがまさかのトップカーストの班だった。

なんでも俺と拓斗がたまたま二人くっついていて余っていた男子の枠が水嶋ヒロトを除いた二枠ありそこに俺と拓斗が抜擢されたらしい、きっとこれがほかの男子なら踊りだしそうになるほどうれしいのだろうが俺はそんな気持ちにはならず心の中は世紀末だった。


俺の平穏な高校生活はが詰んだ。


さらば俺の平穏な高校生活。


「じゃー班も決まったことだし次は班の中で改めて自己紹介と役割を決めてね」


 
















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