第21話 もふもふとお風呂に入る

 まだ日が昇っている時間帯。無事に赤月レッドムーンに着いた。ほむらが飛行速度制限してくれたおかげで、酔わずには済みましたけどね。速いは速いけど……。

 どうやら空は苦手みたいです。もう飛行は嫌です。


「アオバの弱点見つけたね」


 ジズは無邪気に笑った。


 赤月レッドムーンに到着するとタキさんがお迎えしてくれた。


「みんなよくご無事で」


 タキさんはメンバーの顔を確認し、涙を流していた。


「ただいまタキ。アオバのおかげでリベンジ成功」


「アオバ様ありがとう。これで、死んでいった仲間も浮かばれます」


 タキは更に涙を流した。


 ――――――――――――――――――――――――


 赤月レッドムーンのお風呂は広いですね。流石お城。綺麗で、小洒落こじゃれてますよ。西欧風な旅館の貸切風呂だと思えばいいかな。

 ローブを脱ごうとした時、いつの間にか元の白色のローブに戻っていた。はて? あんなに赤黒い色で染まっていたのに…… 気づかなかったよ。


 体を洗ってる時に


「私も入りますよ~」


 と、可愛らしい声が聞こえ、声の方を見るとワホイットが入ってきた。


 おっと。これはこれは、なかなかの物をお持ちで。


 普段ローブで隠れていたが、何とも言えないたわわな果実をお持ちで。なかなか美味しそうですよ。


「おいアオバ。変態オヤジ。人の妹を見てニヤニヤすんな。沈めるよ?」


 ラブックの回りに赤いオーラが……。


「いや、ニヤけてないよ。感心してんだ」


 俺はそんなラブックを見てキリッとした。


「何を感心してんだよ」


 シバが笑いながら言った。


 ワホイットは顔を赤らめていた。そんなワホイットさんは可愛いです。


 予め言っとくけど、裸じゃないよ。水着みたいなのを着用してます。だけど、それが余計に……。



「そういえばロロさ、【龍人化】になったじゃん。あれってほむらが従魔になってるから?」


 気になってたんだ。赤い姿の龍人化したロロはとてもかっこよかったんだよね。


「まぁそうだね。ほむらが自身の魔力を俺に注いでくれたんだ。そしたら【龍人化】を覚えたよ」


 なるほど、魔力を分け与えてくれたんですね。俺も龍を仲間にしたい。


 いや~それにしても湯船は気持ちいいです。古傷が癒える。って、そんな傷はないけど。あったらって事ね。

 シーナとイスカにも入れてあげたいな。きっと喜ぶことでしょう。


 そこで思いつきました。


「皆さんちょっといいですか? 」


 みんなの視線が俺に集まった。


「従魔もお風呂に入れてたいと思うんだけど、いいかな?」


「おおいいね」

 と、筋肉隆々なシバ。


「賛成」

 と、笑顔が素敵なジズ。


「お願いしますでござる」

 逆にお願いしてきたスリップ。


「うん、うん。一緒に入りた~い。ワクワクする」

 可愛いらしいワホイット。


「まぁいいよ」

 ニヤけて言う、ツンデレなラブック。


「よ~し、ちょっと待ってて」


 そう言い、脱衣場まで行き、GODガチャ改めがっちゃん(何となく名前を付けてみた)を手に持ち、ダサイって? ネームセンスないんですよ。【ディスチャージ】した。まず出て来たのは……。



「それでは皆さんよろしいですか? まず初めは一角兎バニコーンこと『ラビー』です」


 ラビーはヒョコヒョコと風呂場へ入る。


「カワイイ――――――」


 ワホイットはラビーに抱きついた。そして、もふもふを堪能している。


 あっ俺も抱きつかれたい。


「次はお馴染みの『レモン』」


 何故かピョンピョン跳ねながら風呂場へ行くレモン。可愛さアピールですね。


「おお、レモン殿はいつ見ても愛らしいでござる」


 ニヤニヤするスリップ。さすがにラブックもニヤけています。


「そして最後はコチラ。ゴブリンナイトこと『ゴブ汰』。レッサーウルフこと『おやつ』。二人合わせてゴブリンナイトライダー」


 おやつに乗ったゴブ汰が堂々登場。


「おお、すげ~。ゴブリンナイトライダーなんて初めて見たよ。って見た目はゴブリンとレッサーだけど。でも何かカッコカワイイじゃん」


 シバは頷きながら言った。


 まぁ装備外したら普通にゴブリンだからね。


「ゴブ汰もおやつも可愛い」


 ラビーの体を洗いながらワホイットは言った。


「で、ござるな」

「「うん、うん」」


 スリップとジズとロロは目を輝かせている。


 それからはみんな一緒に湯船に浸かった。

 ワホイットはレモンを抱きながら入っている。その隣りにラブック。

 シバとゴブ汰は肩を並べ、頭に手拭いを乗せている。オヤジか。ジズはおやつと戯れていて、ロロはラビーとお喋りをしている。


 そんな光景を見てると癒される。なんて微笑ましいことでしょう。


 みんなで一時ひとときの癒しを過ごしていると、タキさんがガンガンに冷えたエールを持って入ってきた。


「何やら賑やかで楽しそうですね。私もご一緒しても? って、何この魔獣達は!! か、かわいい」


 タキさんはエールを両手に持ちニヤケて言った。


 みんな反応は一緒ですね。

 そして、これは贅沢ですね。昼間から湯船に浸かりお酒を飲むなんて、前世では考えられませんね。


「もちろん一緒に。って早っ!!」


 既に湯船に浸かって、しかもゴブ汰にエールを渡し一緒に飲んでんじゃん。


 ふふふっ。最高な癒しです。疲れが吹き飛びました。こんなのがずっと続いて欲しいですね。


 それからしばらくして風呂から上がると、ジズが奇妙な顔つきで俺の背中を見て言った。


「ねーアオバ。背中に子龍が居るんだけど……」


 はい? 子龍!?


「確かに居るでござるな」


 スリップは興味津々で見つめている。


「黒いですな」

「黒いですね」

「これは邪龍かな」

「ですね~」

「何でこんな所に?」

「あれじゃないですか? 邪龍の血肉を喰らったからじゃないですか?」

「あ~なるほど、だから邪龍がここに居るんですね」

「でも可愛いでござる。チビ龍」

「うん、可愛い」

「羨ましいな、こんなテイムの仕方あるんだ」


 シバとジズが俺の背中を見ながら話し、スリップ、ワホイット、ロロも加わった。

 居るって何です? 喰らってないし、口に入っただけだし。多少ね…… いや、だいぶ……。可愛い? テイム? 意味わかんない。


「あの時のアオバは怖かったな」

「怖かったですね」

「魔獣より魔獣っぽかったよな」

「で、ござるな」

「「うん、うん」」


 みんながひそひそと話す。

 聞こえてますけどね。


「魔獣ならアオバをテイム出来るかな?」


 ロロが言うと、


「出来るでしょ。アオバは人間じゃないし」


 と、ラブックが呟いた。


 皆大笑いした。


「なるほど、アオバ様は人外と」


 タキさんまで……。


 まあ皆さん和んで。何だかほのぼのしてますね。良い事です。って、クソッ。何ほのぼのしてんだよ。

 人を見て大笑いしちゃってさ。魔獣より魔獣っぽいって、何だよそれ。俺は人間ですよ? テイムされちゃうのかな? てか、される前に倒しちゃうよ?

 全くみんな好き勝手言って。


「もうわかったら。それよりどういう状況か教えてくれない?」


「そうだね、アオバの背中に子龍が居るんだけど、多分邪龍ね。で、まぁ居るっていうか、描かれてるっていうか。良く街で、躰に絵を入れてる人見かけるでしょ。あんな感じ」


 ジズは説明してくれた。


 あ~タトゥーの事ですね。う~ん、それが背中に? ドラゴンタトゥーですか……。


「で、それが今、寝てるんだよね」


 うん? 寝てる?


「アオバ、子龍は生きてるみたいだよ」


 ロロが言った。


「え? 生きている? どういう事?」


「多分、アオバが邪龍を倒し、血肉を喰らった事で、邪龍の魂がアオバに乗り移ったんじゃないかな?」


 え~? 乗り移るって? どういう…… 怖い事を笑顔で言うジズが怖いです。


「呪われたでござるな」


 ボソッとスリップが呟いた。


 呪いとかそういう事言うなよ。背筋がゾクッとしたよ。


「ね~邪龍の血さ、かなり保持してるから、みんなも飲んでみない?肉もあるよ」


 ………。


「ごめん、聞こえなかった。それより、その鏡で背中見てみな」


 …… ロロに促され、脱衣場に備え付けられている鏡で、背中を覗いた。


 おお~マジですか。ほんとに居るし寝ている。しかも可愛い。確かに可愛いですよ、チビ邪龍。何故子龍になってるかはわからないけど。てか、髪が所々赤黒くなってる。メッシュみたいになってます。


「多分邪龍の血を浴びたからだと思う」


 髪をいじっている俺を見てジズは言った。


 そして、こんな言い伝えがあるとジズは語ってくれた。


 言い伝えでは、龍を倒し、その龍の血肉喰らった者は、強靭な肉体を手に入れるとか、不老不死になるとか、言われているらしい。後は、その血に耐えられず、死んだり、龍になるとかも言われていると。


 強靭な肉体か~。それは欲しい。不老不死は……

龍になるって、文字通り本当に龍になっちゃうのかな?それは嫌だな。何よりまだ死にたくない。


「あくまでも言い伝えだし、実際に僕達は倒したことあるけど、まぁ多少は血を浴びたけど、喰らったわけじゃないしね。それにただの龍だし。アオバが倒したは邪龍だからね。格が違うよ。」


 ただの龍って何よ。格はあるかもしれないけど龍は龍でしょ?

 しかも俺は止め刺しただけだよ……。


「アオバみたいに古龍を倒した人いないから、はっきり言ってどうなるかはわからないな。でも今生きてるし、死にはしないでしょう」


 他人事。何だか自分が人間じゃなくなってきてる気がするよ。思いながら苦笑した。


「でも可愛いからいいじゃん。呪い…… いや、従魔だよ。うん、最高な従魔? になるかもしれないし、前向きに行こう。ね、しばらく様子見しよう」


 ロロは言うけど、従魔なのかこれ? いやテイムしてないから確実に従魔ではないよね。呪いだよ呪い……。


 まぁ考えてもしょうがない。確かにこれは様子見するしかないよね。


 こうしてお風呂から上がり、一旦部屋に戻った。

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