第11話 もふもふと新たな仲間。後編

 気づいたらもう、日が落ちかけていた。レスガーシュさんに、今から街まで行くと、どのくらいか掛かるか聞いた。今からだと、夜中頃になるそうだ。仕方ないから、今日はここで休むことにした。


 皆さんには、明日この砦を壊す事を伝えた。当たり前ですよ。盗賊の砦何て、残しても良い事はありませんから。


 シーナ達に、話は済んだ。残っている盗賊は、改心したから大丈夫だと招き入れた。シーナは大変喜んでいた。


 レスガーシュさんから、一部屋見繕ってもらい、そこへ案内された。しばらく休んでいると、1人の元盗賊がやって来た。レスガーシュさんが呼んでいるというので、その場所まで案内された。


 レスガーシュさんが1つの部屋の前にいて、手招きをした。中を覗くと、女性2人と少女1人、そして何と獣人でしょうか、1人居た。猫耳に尻尾。

 これはやばい、やばいですよ。可愛い。猫耳と尻尾以外は人ですね。そして怯えてます。


「どういうことですか?」


 話しを聞いた。

 奴隷として捕まえ、明日奴隷商人に引き渡すことになっているとの事。そうですか、奴隷ですか。


「どうしますか?」


 女性達は俺を、怯えた表情で見ている。


 う~ん、この世界にも奴隷制度がありましたか。まぁ、それも1つの商売だよね。奴隷商と揉めるのはあまりよくない気がするし、関わりたくない。だけど、もう既に関わってるよね? なら、見過ごすわけにはいかないかな。面倒臭いことに巻き込んでくれましたね。


「どうするも何も、もちろん解放してください。今すぐに。レスガージュさん、盗賊業はもうしないんですよね」


 すると、1人の元盗賊が、「でも、高く売れますよ」と、言ってくる。何を言ってる? まだ盗賊のつもりですか? まともに生きるんじゃなかった? レスガーシュさんに、彼を監視するよう頼んだ。


 解放された女性達は、喜び、礼を言う。最初は俺を見て、女性達を買いに来たのかと思ったらしい。女性達はさらわれ、ここまで来たとの事だった。

 何て事。誘拐じゃないですか。それを奴隷として売るなんて。何て世界だ。こんにちっちゃい少女まで。許せませんね。


 そう思いながらも、さっきから俺は、猫耳から目が離せません。耳に尻尾に触りたくてたまりません。が、ここは我慢我慢。


 レスガーシュさんの部屋へ行き、奴隷商の事を聞いた。この世界の奴隷は、表向きは禁止になっている。ただ暗黙の了解で、裏では取引されている。主に貴族が買うらしい。


 相場

綺麗な女性金貨7枚。普通の女性金2枚。

綺麗もしくは可愛い少女金貨4枚。

ただの少女金1枚。丈夫な男性金貨3枚。

ただの男性銀貨8枚。活きのいい少年金貨1枚。獣人金貨5枚。エルフ金貨20枚。


 とまぁ、こんなとこだった。なるほどエルフが1番高いのですね。エルフは長寿で老化も遅く、色々と使い勝手がよいらしい。女性が男性より高いのは……想像に任せましょう。


 明日、砦を壊すことを更に釘をさしといた。

 レスガーシュさん達は、こらからは街に戻り、もう一度冒険者に戻るとのことでした。


 そして何と、ここにある全ての宝を俺に譲ると言ってきた。


 それはありがたい。貰える物は貰いますよ。って、何ですかこの量は。 どんだけ溜め込んでんのよ。さすがにこれは貰い過ぎ。レスガーシュさんがただの盗賊だったら、そりゃあ根こそぎ貰うけど、元々悪い人じゃないんだよね。少し考えて、山分けにすることにした。それでも半分頂く俺って、せこい?


 部屋の外で物音がした。


「誰だ」


 俺とレスガーシュさんは急いで外へでた。そしたら、すごい勢いで走り去る男がいた。


「逃がしませんよ【捕縛の鎖】」


 男を捕らえた。見ると、先程の監視対処の男だった。

 白状させると、今の状況を、途中で合流する手筈になっていた、奴隷商に密告しようとしたらしい。どうやら奴隷商のスパイだったらしい。


 さて、どうしたもんか。このまま殺りますか?

 レスガーシュさんが割って入ってきた。こんなんでも根は良い奴で、レスガーシュさんの同郷の者で弟分らしい。しっかり面倒見るから、許して欲しいと。しょうがないから、許してあげた。


 それから部屋に戻り、一夜を過ごした。



 ――――――――――――――――――


 翌朝、宝等々、持ち出すものは全て俺の巾着に入れ、砦の破壊活動していた。


「これは一体何事ですか!!」


 1人の男が叫んだ。


 何だ? 瓦礫の陰から顔を出した。すると黒ずくめの集団がいた。


 その1人が、レスガーシュさんを見つけ話しかけた。


 黒のフード付きローブを纏った禿げたおっさん。その後ろに馬車1台。脇に同じ格好の7人の男。

 これは奴隷商人ですかね。ここを出る前に来ちゃったか。会わずに去りたかったのに。


 何やら凄い剣幕で、レスガーシュさんに言いよっている。元締っぽい。困ったな。これは出るしかないようですね。


 そこでまた閃いた。


「どうしたのかな」


 俺は、砦の瓦礫から出て、言った。


「何だ貴様は」


「何だチミはってか。そうです。私が変なシャーマンです……」


 ゴブリンシャーマンの被り物を被り、どっかで聞いたことあるセリフを吐いた。これなら誰だにもバレない。ナイスアイデアでしょ?


「ここの女を貰ったついでに、砦を破壊してるだけだが。何か問題でも?」


「問題も何も、私たちが盗賊に取引をして、そこの奴隷を買う手筈になってたんだが……」


「それは残念。我がすでに貰ったんだが。他を当たるんだな」


「おいレスガーシュ、どうなってるんだこれは」


 元締は怒鳴っている。


 レスガーシュさんが困ってますね。


「しょうがない。我も話しが通じない訳でもない。なら、金貨1枚で手を打とうではないか。貴様も、ただで金が入るんだから嬉しかろう。わかったら受け取り帰られよ」


「ふざけな!!」


 うるさいおっさんですね。傍付きの7人も、それぞれ武器に手を掛け構えた。


「ほほう、人間如きが、この魔族の我に歯向かうか」


「レモン、ラビー、相手をしてあげなさい」


 そういうと、どこからともなく奴隷商達の前と後ろに2体が現れた。


 予め、レモン達に、【魔獣戦闘モード】を掛け、待機をさせといた。殺さないように手加減するようにと。


 さて、見物といきましょう。


 レモン、ラビーVS7人の奴隷商人


 先に動いたのは奴隷商人①。素早くラビーに、駆け寄りながら、腰に付けていた双短刀を抜き取り、【風の太刀】と言うと、双短刀を緑色のオーラが纏う。

 そのままラビーに斬りかかるが、右に避ける。すかさず①の双短刀も軌道を変え、ラビーを捕え、再び斬りかかる。左の短刀を躱し、右の短刀を角で受け止める。と同時に、角から【サンダーショット】を放った。①は咄嗟に双短刀を前にし、防ぎながら後ろに飛ぶ。が、威力が強く、そのまま①を吹き飛し、倒した。


 流石ラビー。速いですね。①もなかなかでしたが、スピードではラビーに劣りましたね。


 次は奴隷商②。【火の闘拳】と言うと、拳に赤のオーラ纏わせる。レモンに火拳の連打を打ち付ける。その拳がレモンの体にめり込むも、全て跳ね返す。

 ②も跳ね返えされ、驚きを隠せない様子。が、何度もレモンに連打を繰り出す。効かないとわかったのか、拳に意識を集中させる。

 すると、拳に纏った火が、どんどん大きくなり、炎と化していた。更に溜めていく。

 それを見ていたレモンは【ウォーターショット】を放った。拳に集中していた②は【ウォーターショット】に気づかず、まともに食らった。

 もちろん、火は水に弱く、せっかく溜めていた炎も掻き消された。その攻撃に何とか耐えた②に、更に追い討ちをかける様に、レモンは【ウォーターショット】を放ち、②を打ち倒した。


 ②は拳闘士ですかね。拳に気を取られすぎですね。なんかちょっとマヌケだね。脳筋ってとこかな。


 次に③④⑤が一斉に、ラビーに攻撃している。③は【ファイアボール】④は【ウィンドカッター】をラビーに放っている。それをラビーは難なく避ける。避けながら【サンダーショット】を③に放ち、呆気なく倒す。

 そのまま④に突進し、体当たり。④を吹き飛ばす。と同時に⑤が青のオーラを纏った剣をラビーに振り抜いた。ラビーは避けるも体に傷をつけた。その勢いのまま、ラビーに斬りかかる。その姿が何とも美しい。まるで剣舞でも見ているよう。

 ラビーもそれに合わせるように、左に右に、前へ後ろへ、時たま角で防ぎながら、避けている。⑤は疲れたのだろうか、勢いがなくなり、次第に動きが止まった。そして降参した。


 さて、③④は魔道士ですかね。まぁ、俊足のラビーに適うわけないよね。


⑤は戦士だったのかな? なかなか美しい剣舞でした。強いよ彼。あの技は多分消費が激しいんでしょうね。おしかったね。降参するなんて潔い良い。だけど、魔獣相手に降参しても意味無いよね。普通は殺られてるよ。 まぁでも自分の力量がわかってらっしゃる。奴隷商にはもったいないですね。


 ⑥は戦意消失。⑦は既に茶色のオーラを全身に纏っていた。以外と速い。

そしてレモンを通り……過ぎた?


 えっ? 俺に向かって来てんの? ちょっ油断したよ。一気に目の前まで迫って、斧を振り上げた。斧? 斧戦士? オーノ――……


「死ねやぁ、ゴルァァァァァ!!」


 凄い巻舌。その振りかぶった斧を、両手をクロスにして受け止める。受け止められた斧を捨て、右手の拳に力を込め、俺の腹に一撃を入れる。


 おっとHPが2も減りましたよ。2ですか……。


「それで終わりか? 人間はこうも弱いものなのか? 貧弱よの~。さあ次は我の番ぞ。生きて帰れると思うなよ」


 ちょっと凄んでみた。ふぅ、何て気迫だよ。ちびるかと思った。普通の人だっら、瀕死ですよ。

 ⑦は、まったく動じない俺に、恐怖でおののいている。

 奴隷商人の元締に目をやると、腰を抜かしていた。近づき言った。


「お主が奴隷商の元締だろ? 選ばせてやる。このまま金貨1枚を持って帰るか、ここで、跡形もなく消されるか、どっちがいい?」


「НМЙИУСЙЦ」


 何か言ってるけど、わからない。何語?


「はっきり、わかるように言え」


「すいません。帰ります。金貨もいりません。ごめんなさい」


 脅かしすぎたのかな?まぁ奴隷商人をやってるのがいけないんですよ。


「わかればよろしい。さっさと、帰るがよい。それから、馬車も置いていけ。我が貰う」


 禿げた頭が更に禿げ上がった気がした。髪ないんだけどね。金貨1枚と馬車の分の金貨1枚も上げた。優しいでしょ俺。


 とっておきのプレゼントまであげた。陰執者ストーカーの指輪。使い方には、くれぐれも注意するように言った。


「最後に、今日をもって奴隷商は解散しろ。次、もし見かけたり、貴様らの話しが少しでも我の耳に入ったら、一族諸共滅めっする。わかったな?」


 奴隷商一同頷いて、すごすごと帰っていった。


 やっと終わった。疲れましたね。あれ? 皆さんの様子が変ですね。


 シーナ、レスガーシュさんはじめ、他の人達は唖然としていた。開いた口が塞がらないって感じですね。誰も殺してませんよ。苦笑

 ただ1人だけは、目を輝かせていた。それは誰だって? 猫耳娘さんです。


 この時の様子をシーナは、「やっぱり人間じゃなかったんですね。魔族だったんですか」と言った。


 レスガーシュさんも「アオバさん、ほんとうに魔族だっんですね。よく俺は生きてたよ」と苦笑した。


 猫耳娘は「かっこいいです。一生ついて行きます」と言ってくれた。


 そして、昨晩のレスガーシュさんの弟分が「ごめんなさい。許してください。裏切りません。もう二度と逆らいません」と言っていた。


 突然レスガーシュさんと仲間達は俺の前に膝まづいた。


 え? 何何?


「このレスガーシュ・ビトー以下5名はアオバ様に忠誠を誓います。死ぬまでお供致します」


「「「「「誓います」」」」」


 はあ? 何言ってんの?


「誓いますわ」


 え? 猫耳娘まで。


「誓います」


シーナさん……。

シーナは笑っていたから、冗談ってわかった。


「えっと、なら私達も誓います」


え? 綺麗なお姉さん達まで。


「ちかいま~す」


 ちょっ少女まで真似して。でも可愛い。


「いや、あの~レスガーシュさん。すいません。人間の仲間は要りません……」



 ――――――――――――――――――


 砦を完全に破壊した。レモンとラビーは【補助】し、皆さん馬車に乗り、砦を後にした。うさ子は少女に抱っこされている。


 馬車の御者はレスガーシュさんがしていた。隣に座り話した。もう一度、女性達をどうするか確認した。レスガーシュさんは、最後まで責任をもって、家まで送り届けると言った。と言っても皆、ブランモンでさらったらしい。まぁとりあえず一安心です。


 街まではあっという間でした。さすが馬車は速い。それにしても、濃い1日だった。


 この街で、冒険者の道を歩むんですね。楽しみです。




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