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How_to_✕✕✕

プロローグ

しかし、この状況はなんだ?

 オレのすぐ近くにはオレと同じ学校の制服を着ていて、血を流しながら倒れている女子。

目の前では血のついたカッターナイフを持ち、それをオレに向け脅迫し始める他校の制服を着た女の子。

 そしてオレは見ず知らずの女の子に、学校の屋上で殺されそうになっている。

いったいオレが何をしたって言うんだ?

確かに今までに少しだけ悪いことはしてきたよ。

谷山の財布から小銭ちょろまかしたり、校舎の裏側でタバコ吸ったりしたさ。

だけどそんなことで殺されなきゃ、あかんのだろうか? なんという不条理。

 などと考えていると、女の子はさっきと同じ冷たくて、まったく変わらない平坦な口調を飛ばしてきた。

「イエスかノーどっちなの?」

「へ?」

「誰にも言わないのか、イエスかノーで言えって聞いているの? 分かる?」

首を縦に振る。

冷たく平坦な口調にプラスして目線。

視線が痛いです、見知らぬ人。

「わかるけど、いきなりそんなこと言われても……」

言葉が続かねぇよ。

「じゃあ、死にたいのね?」

「ちょっ、ちょっと待てよ!」

有名な芸能人みたいに突っ込む、オレ。

「何でオレが殺されなきゃいけないのか、理由を教えてくれ!?」

「理由? 簡単じゃない、今見たことを誰にも言われたくないからよ。要は口封じ。 そんなことを言わなければわからないってことは結構、頭がとろいのね。それに殺すとは言ったけどあなたの返答の結果によるわね。つまりイエスと言えば殺さない。 だけどノーなら・・・・・・、わかるでしょ?」

 選択の余地がねぇじゃん!

絶対この状況でノーとは言えない。

この状況でノーと言えた奴は相当の勇者だ。

 彼女の綺麗な顔立ちもこのシリアスな場面に合っている為、さらにオレの緊張に拍車をかけている。

こんな女の子に殺されかけているなんて。

しかも放課後の学校で。

こんなことってないだろ普通は。今までの日々の中でこんなことが起きるなんて思いもしなかった。ずっとなんの危機もないまま、生きていくのだろうなと思っていたし、それにもしこれがその危機というもんだとしたら最初で最後だろうな……。

ホント、なんなんだろう。

長く黙ってしまったオレに痺れを切らし、彼女は言った。

「死にたいみたいね。まぁ、ころしてもどうせキミも消えるだけだから」

彼女はカッターの刃先をオレの喉元へぴったりくっつける。


―――ちょっと待てよ。消える?

なんだそりゃ?

言ってる意味がわかんねぇよ。

 

―――疑問が浮かんだと同じくらいに、彼女はカッターを持っていた手に力を込めるのがわかった。

オレの人生はこんなところで終わるのか・・・・・・。


―――それもまたいいのかもな。

あー、短い人生だったな。


覚悟した瞬間、声がした。

「何してるのかな、のぞみちゃん?」

声がしたほうを向くといつのまにか二メートルもない距離のところに、オレと同じ学校の制服を着た男が立っていた。

その男は髪の毛は茶色に近く、よくファッション誌などで見るような髪形をしている。

制服を着崩しているからなのだろうか?

なんだかちゃらちゃらしたイメージを持つような人だ。

「のぞみちゃん、わかってるよね? そんなことしたら僕、怒るよ」

突如、表れた男は笑いながらいった。

「リ、リーダー?」

 他校の制服を着た女の子は驚いていた。

しかも、リーダーって言ったよ、今。

「だから部長って呼んでよ、のぞみちゃん」

「じゃあ、リーダーものぞみちゃんって呼ぶのやめてください。 恥ずかしいです」

さっきまで冷たかった女の子が頬を赤らめ、少しムスッとして恥ずかしそうにしていた。

普段だったら、『萌えるシーンだなぁ』みたに思えるけど絶体絶命の展開から入ると付いていけない。

何なんだよ、この展開は。

さっきまでのシリアスさはいったいどこへ行ったんだよ?

「まぁ、それはいいとしていくらなんでも、この行動は少しやりすぎだよ。 さっき、会話を少し聞かせてもらったけど彼を殺すつもりだったよね? 彼は一般人だよ。 のぞみちゃんが気づかないはずないでしょ」

男は顔色をひとつも変えずに笑ったまま言った。

「で、でも、彼は!」

「でもじゃないよ、のぞみちゃん。 もし彼を殺していたらのぞみちゃんがこの世界から消えてるかも知れないんだよ」

「次から気をつけます」

少しうつむき加減で彼女は言う。

「弁明の前に彼に謝らないとね」

女の子と話していた男はオレのほうに向き直り言った。

「ウチの部員が下手な事をしてすまない。 君にしたことに対して許してくれって言うのは勝手すぎるんだけど、部長として、僕としても謝りたい。」

そう言い彼は頭を下げた。

「ほら、のぞみちゃんも」

納得しない顔で見知らぬ彼女もオレに頭を下げた。

リーダーと呼ばれた男は頭を上げ右手を差し出した。

「突然の自己紹介だけど、僕の名前は持田(もちだ)謙人(けんと)。 この学校の三年生だ」 三年生ってことは、ひとつ上か。

「で、そこにいるツンツンしてるのが、綾瀬(あやせ)川(がわ)のぞみ。 のぞみちゃんって呼んであげてよ」

そう言い彼は笑った。

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