何度転生してもガチ親友の悪縁
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因縁の親友が降ってきたで章
第1話 天井をぶち抜いて登場
彼は魔王城デルフィンデライの頂点にある魔王の間の天井をぶち抜いて降ってきた。
瓦礫を引き連れて降ってくるなり、轟音を立てて激震を起こしつつ爆発のような粉塵を巻き起こす。
静寂の後……粉塵がやっと治まった。
魔王の間の床に生まれた大穴の中央、大の字に伸びて、ぴくりともしない青年が瓦礫のど真ん中に素っ裸で横たわっていた。
「……ま、魔王!」
勇者オルランドが一番先に我に帰って、怒鳴った。
「増援とは、卑怯だぞ!」
「なっ」魔王グラシウスも抜かれていた度肝を取り戻す。「あ、あれは、貴様らの仲間では無いのか!?」
とは言ったものの、本当は魔王だって勇者だって、宿命の相手が素っ裸の青年を味方として呼ぶはずが無い――と信じたいのである。
「う、ううーん……」
そこで、ようやく素っ裸の青年が小さく呻いた。ぼんやりと目を開けてしばらく天井の大穴から見える青空を見ていたが、
「――ヘーーーーックショイ!」
大くしゃみで飛び起きた。
「あ、こんにちは」
青年は勇者一行と魔王と魔王の腹心の配下である双魔鬼に気付いた。これから正に死闘を繰り広げんとする一同に、脳天気とも呼べる笑顔を浮かべて愛想良く挨拶をした。
この裸野郎を凝視していた魔王が、はっと勇者を見た。勇者は首を全力で左右に振りたくって、魔王を睨みつけた。魔王は両手を振りたくった。以心伝心である。
流石にこの素っ裸の脳天気野郎も、空気を読んだようだ。
「ああ、何か俺、邪魔したみたいですね、すみませんです。すぐに出て行きますんで、どうか気にしないで続けて下さい」
身軽にひょいと立ち上がり、ぶらぶらさせつつも大扉の方へとすたすたと歩き出した――所で、
「――ブェエエックッショオオオオイ!」
二度目の巨大くしゃみをした。
「あれ、俺、風邪引いた?いやに冷えるなあ。んー???」
裸野郎、そこでやっと己が裸野郎である事を自覚する。
「ギャーーーーーーー!!!!俺が裸!?何で裸!?これじゃ変態じゃねえか、ギャアアアアアアア!」
前を隠して内股で慌てふためく裸野郎に、お前は間違いなく変態だと突っ込みを入れたいのを一同が耐え忍んだ。
「……あ、あのー」
変態は泣きべそすらかきながら、一同の方を振り返って哀訴した。
「邪魔をして本当に申し訳ございませんが、服をお借りしてもよろしいでしょうか……?」
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