赤い花

常雨 夢途

欠陥 一

 ふと、自分の周りを行き交う人間達を眺めていると、垣間見てしまうものがあります。それはといいますと、その人間達は、世界の見えないところ、舞台裏と言いましょうか、そこから伸ばされた数々の見えぬ糸に、手、足、頭等々、様々な部位を吊るされ、ぶらりぶらりと歩かされている。そんなふうに見えるのです。

――人形劇。

自分達“人間”の人生の定義は曖昧ですが、これは一つの答えなのではないかと、自分はひそかに考えています。

この世界で“正しく”生きる人間は誰も彼も人形なのではないかしら。この世界はただの劇の舞台なのではないかしら。とかく、周りの人間が、四方八方から伸ばされた糸によって、操られているように見えるのです。

 かくいう自分は、自身の身体の内から伸びる、赤い赤い血管のような糸が、間接、心臓、脳等々、身体中に、解く余地が見当たらないほど、複雑怪奇に絡まっているように思えます。

 そんな、周りの人間と自分との“違い”に、苦悩し、恐怖し、生きてきました。

 それに自分はどうも、この世界が求める人間の理想像の枠からあまりにもはみ出しているらしく、一々自分と他の人間との“違い”に傷付き、悲しみ、絶望してきました。

 また、人間は自分達の理の枠から外れるものを嫌い、嗤い、排除しようとする生き物だということを、自分は幼い時からわかっていました(自分の短い人生の中で、唯一、それだけが人間のことで理解できた事柄でした)。故に、それを幼い時から極端に恐れ、隔ててきました。

そして、そんな人間たちに愛されたいと、愛も解らないまま、私はそんな幻想を懐いて己を殺してきたのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る