ソウル・イーター 聖喰者の罪と罰

市九郎

第1話 「始まりの始まり」

 生物は、喰らうことで生きている。

 喰らうとは、肉を、骨を、血を、魂を取り込むこと。

 生きるとは、喰らったものの全てを、背負うこと-。



 序章



 昔から、自分の気になることに関しては、とことんこだわる性格だった。

 カエルの一生とか、キノコの生息場所とか。

 大人達にとってはどうでもいい事で、くだらない、勉強しろ、と言われたけれど、当時の自分には、カエルやキノコが世界の全てだった。

 それらを観察し、「食べる」ことが。


 「父さん、母さん、そろそろ行くよ。必ず、見つけるからね。」


 月が明るい春の夜、俺は一人、旅に出た。



 第一話



 「今日は一段と暑いな……」


 ひたすら続く田園風景。影ひとつない一本道。だだっ広いこの国、オーズ王国の名物だ。

 この国の特産品は麦、主な産業は農業。人族が住む国の中では、最大の国土を有する俺の母国だ。

 そして、非常に食との関係が深い国でもある。

 国の政治は、「イーター」と呼ばれる聖職者によって行われ、食を司る彼らは子供たちの憧れだ。父さんもイーターだった。

 そのまま俺は歩き続け、日暮れと共に宿に入った。

 猛暑のおかげでヘトヘトだ。


 「飯食って寝るかな」


 旅に出て3ヶ月、両親に繋がりそうな情報は何も無く、俺は焦り始めていた。

 手元にある手がかりは一つ。父のものだったらしい短剣一本だけだ。


 「クソ、こんな調子じゃ……」


 と、ため息を漏らしたその瞬間。


 「おい!何しやがるこのドブ娘!!」


 大きな音と怒号が階下で響いた。


 「何だこんな時間に」


 と言いつつも野次馬心に駆られ、俺は下へ向かった。

 これが大きな出会いのきっかけになるとは、夢にも思わずに。


 つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る