本を返す日

@山氏

図書委員のあの子

 放課後、俺は図書室に来ていた。この前借りた本を返すためだ。

 カウンターにはすでにあの子が座って本を読んでいる。俺はいつ声をかけようかチラチラ伺いながら、借りた本を読むフリをしていた。

 この本はもう読み終わった。せっかく借りたのだからと読んでみたら、結構面白かったのだ。

 一瞬、彼女と目があった気がする。俺は目を逸らし、本の方を向いた。

 

 

 図書室がもうそろそろ閉まる時間だ。中には俺と彼女しかいない。

 俺は立ち上がり、彼女に近づいた。彼女は俺に気付くと、顔を上げる。

「あ、あの……これ……」

 俺は借りていた本を差し出すと、彼女はそれを受け取ってカバンの中にしまう。

 少しでも話していたくて、俺はカウンターから彼女の方を見る。

「どうかしましたか?」

「えっと……」

「面白かったですか?」

「え? あ、面白かった、です。」

「それならよかった」

 彼女はカバンの中から本を取り出すと、俺に差し出した。

「これ、読んでみますか?」

「え、いいんですか?」

「はい、どうぞ」

 俺は彼女から本を受け取った。

「ありがとう」

「次からでいいので、読んだら感想聞かせてください」

 そういう彼女は少し微笑んでいた。俺は顔が熱くなるのを感じて、コクコクと頷く。

「それじゃあ、もう閉めるので」

「あ、あの! よかったら一緒に帰りませんか……?」

 彼女は少し考える素振りを見せてから俺の方を見る。

「ごめんなさい。寄るところがあるので」

 そう言って彼女は荷物をまとめた。俺は「そっか……」と呟いて図書室から出る。

 俺はため息を吐いて自分の家に向かった。

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