第4話 人間と同じでやっぱり魔石にも個性があるなって

「ふむん、魔石一つにも色々と特異性があるなぁ」



 ボルタから譲ってもらった魔石箱から魔石を取り出し、いじくりまわしながらキヤは呟いた。今いじっているのは回転の魔石だ。見た目が完全に歯車で、魔力を流し込めばその場で流し込んだ魔力量に応じて回転するという特性がある。


 流し込む魔力量次第で回転速度や回転する時間まで自由自在だ。魔力さえ流し込んでいれば手放しても回転は続く。ボルタ曰く子どもたちの間で魔石相撲という遊びが流行っており、キヤが住んでいた世界でいうベーゴマのそれに近いのだ。


 ただ回転はじめはともかく停止させるのが少々厄介だ。機械のように電気を止めれば稼働は止まるわけではなく、流し込んだ魔力がなくなるまで回転は続く。しかも徐々にスピードが落ちるわけではなく、急に止まる。


 この回転の制御が目下のキヤの悩みだ。車のブレーキなどのように何かを押し付けてスピードを緩めるのか、それとも魔石の魔力をなんらかの装置を使い吸い出し、動力を逃がすことで止めるのか。回転し始めはゆっくり回っているのに、理不尽である。


 理想を言うなら両方がいいだろう。だがブレーキはともかく魔力を逃がす装置についてはこれから考える必要があるだろう。現時点ではキヤは流し込む魔力の量を調節することでどうにかしている



 そしてもう一つ懸念事項がある。魔力を流し込むには魔石に直接触れなければいけないこと。これは大体の魔石に適応されることだ。例えば火の魔石なら手に持ち魔力を流し、すぐさま火をおこしたいところに放り込む。でなければ手を火傷してしまうのだ。


ちなみに魔法学者曰く、魔法による火の付け方は魔石による火の付け方は厳密には違うものとなっているそうだ。




 キヤの作るものは基本的に動力は内部にあるもの。ただキヤがつくった機械もどきはキヤの世界にある機械のように複雑な回路や構造はしていないのが幸いだ。キヤはモーターのような魔石カバーを取り外しが容易にできるように作り、魔石に作業直前に魔力を流し込み、3動作くらいで機械に組み込めるように組み立てた。


 回転の魔石についてはこれでいいのだが、推進の魔石の制約はかなりシビアだった。推進の魔石は直接触れ続けていないと機能しないのだ。なのでキヤはミニ旋盤の横面に推進の魔石を埋め込み、旋盤自体はテーブルの上に引いたレールの上を走るように作った。


 この推進の魔石は大きさにも左右されるが、くっつけられたものを一緒に動かすので、ネジのような一定間隔のミゾを刻むには最適なのだ。


 紙とペンがあればこういうものを纏めておきたいのだが……意味もなく回転の魔石をクルクル回していると、ボルタの声がドア越しに響いてきた



「おうキヤ、メシ作るの手伝え」


「オッス! ちょいと待っててください、片付けるんで」


「ん」




今日のゴハンはなんじゃろな、そんなささやかな幸せをかみしめながらキヤは道具をしまってボルタの元へと向かう



ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



「そういやキヤ、お前いつの間に魔力操作を覚えた?」


「んむ?」



 キヤがパンにベーコンと野菜を挟んだものをパクついたときに、ふとボルタは疑問に思っていたことを尋ねた



「はふ、ひょっほはえひ、へひふはは?っへはっへひははへひはひは」


「口の中のモン片付けてからモノを喋れ、あとその食い方イイな、マネするぞ」


「ほふ」



 ちなみに先ほどのキヤは『はい、ちょっと前にできるかな?ってやってみたらできました』と言った。どうでもいいが。




「話を戻すが、お前の世界じゃ魔法がない世界なんじゃろ? そんなお前がなぜと思ってな」


「えぇ、まぁそこは想像力を働かせまして。こうじゃないかな?ってやってみたら出来た感じですね。可能ならちゃんと覚えたいんですが。魔石の起動やらなんやらに魔力は切っても切れないものですから」


「ふむ。ワシも魔法は得意ではないが、最低限の魔力操作はできんとマズいか……よしわかった!」



 なにやらボルタが思いついたようだが、タイミング悪くキヤはサンドイッチもどきを口に頬張ったところだった。そんなに頬袋がパンパンになるまで食らいつかなくていいのに



「なんへふ?」


「近いうちワシの元仲間がワシを訪ねてくる。その時に色々と教えてもらえるように手紙を書いておいてやろう」


「ほんっ、んん、ほんとですか?」


「おう、色々と面白いモン作ってくれとるしな! なに、友人に会うついでじゃよ」


「あざまっす! そうだ、どうせなら俺が作ってたものあげましょうよ! 丁度もう少しで出来るんですよ」


「ほう、それはお前が来た直後から作っていたモンか?」


「ハイ! あとはちょっと装飾をすれば完成です!」


「よし、話は決まった! メシの片づけが終わったらワシは手紙を書いて出しに行く、お前はソレを仕上げろ!」


「オッス!」



 まぁこの世界で手紙は数日で届くものではないし、さらに相手方の予定もあるので別に急ぐほどのものではないのだが。勢いが出始めたらそれに乗ったほうがラクなのだ。ツッコミキャラの参入が待たれる







ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ

ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ


某所



「えっくち! もぅ、なによぅ……」グズ


『アラ、風邪? うつさないで貰いたいのだけれど』


「エキノコックスって知ってる?」


『噛むわよツンデレ』


「イナリじゃなくてフ●リって呼ぶわよ」



「「ふしゅるるるる……ブギャベロブジョバババ!!!」」



「参りましたねぇ? お客様をもてなそうとお茶を淹れに席を外していたら、ネコのケンカが始まってしまいましたかぁ……」



やたらセクシーでねっとりとした口調のメガネの男は困ったようにつぶやいた

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