第30話 聖獣と獣人達
コンコン
誰かが外から窓を叩く音が聞こえた?
ちょっともう今度は何よーっ!
「んぁ先生ーっどうしたんですかぁ?」
メアリーが音に気付いてムクッと起きてきた。
「シーっ! 何かが外から窓を叩いてるの」
「えっ! でもここ二階ですよ?」
メアリーはまだ眠そうな目で、だらしなくあくびをする。ガラガラっと窓を開けてみると………
そこへまるでずっと待っていたかのようにヒョイと犬が1匹入って来た?
「アレっ確かチューリップですよね?」
「そうよいつもヨハン爺が連れてる牧羊犬よ?
何でこんな時間にこんな所に?」
メアリーが近づいてよしよし、と頭を撫でると牧羊犬は嬉しそうに尻尾を振り出し何故かアタシの事を舐め回すようにジーっと見つめて来た。
(異世界から来た転生者と勇者の称号を授かりし者よ——— そなた達に協力をお願いしたい)
何? 念話?
(ちょっとアンタどういう事?)
隣でメアリーがアタフタしてる様子を見るとどうやらアタシ達2人に送っているみたいねーっ
「コ……コレって確か前に先生が使った
「そう念話よ! まさかあの牧羊犬がこんな事まで出来るとはね〜っ! 一つ言える事はアレは間違いなくただの犬じゃなかったって事ね」
「ええっ! じゃ魔物なんでしょうかね? ボミエさん達は気付いてるのかなあ?」
( ついて来るがいい )
「なんでしょうかね。態度がちょっと偉そうな感じがするのですが……」
「でも協力してくれって事は何か助けを求めてるって事よね?」
数多の星々が輝く真夜中、アタシはメアリーを乗せて窓から飛び、建物の屋根から屋根へと飛び移る牧羊犬を追いかける。
それにしても夜の屋根から見る町の明かりもなかなかいい感じなんじゃないかしらーっ♪
(ついたぞ。この下だ! )
ヒュッと屋根から飛び降りた牧羊犬に続いてアタシ達も急降下すると暗い路地裏の隅に着いた。
「アラっ真っ暗ねーっ」
「では
ピカッとメアリーの掌から光る玉が出現した。
アラーっ、こんな魔法もつかえるようになったんだ。でもちょっと眩し過ぎるわね〜
「メアリーちゃん眩し過ぎよ! もうちょっと光量下げてくれるかしら」
「あっハイすいません、」
(そなた達には彼らを助けてやって欲しいのだ)
牧羊犬がチラッと向けた視線の先には傷付いたゴブリンやコボルトの子供そして犬や猫の顔をした連中がしゃがみ込んでいた。
「ちょっとーっ!この子達は一体どうしたのよ?」
「先生、怪我されている魔物の方もいます。」
魔物の方って?………
(宿舎をこっそりと抜け出し、町の裏山で散歩しておったら偶然こやつらを見つけてしもうてな)
こっそり抜け出しって……
アタシはこの牧羊犬にロックオンして鑑定スキルでコイツが何なのか確認して見る。
【鑑定結果: 聖獣 ——数百年前にシルヴァニア王国で崇められていた聖獣ズィールの子孫】
本物の聖獣ですって?
「ちょっとメアリーちゃん、どうやらこの牧羊犬が伝説の聖獣の子孫らしいわよ」
「ええーっ このチューリップがですか?」
(正直、我はその名前は好まぬ————そんな事よりも彼らを頼めるか?)
「へーじゃあアレはボミエさん達が勝手に呼んでいるだけなんですかね?」
「そうねメアリーちゃん!
それとその子達はとりあえずコチラで預かって後で色々と事情を話してもらうわよ」
(よろしく頼む、では我はこれで———)
アタシは朝の仕込みをしていたミンジュン達を呼んで事情を説明するととりあえず獣人達を空いている部屋へと案内してもらった。
彼らの面倒はミンジュンや孤児院から来た5人の子供達に任せてアタシとメアリーは部屋へと戻る事にした。
さて今度こそ寝るわよ
ま〜た寝ているアタシの耳元で妙な囁きがするのよね「勇者を抹殺しろ!」ってしつこくしつこく、
コレ本当に耳障りだわ。
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