第32話 ワーグハウゼン

 隣町 『 ワーグハウゼン 』


 シルヴェニア王国の辺境にある伯爵領の領都。

 ロッペンハイマーから北西にある山脈を越えた所に位置する街、皮革工業や織物工業が盛んで人口は10万。人口の60%は人族で30%が亜人、残りの10%が獣人だとか………流石は情報通のカイラねー、物知りでホント助かっちゃう

 入り口でサッと手続きを済ませてから町の様子を見て回ると周りの物がよっぽど珍しいのかメアリーはキョロキョロしっ放しになっちゃってるわね〜

 まぁムリもないわね、ロッペンハイマーでは亜人や獣人なんてあまり見かけないから


「そうかメアリーにとっては2つ目に見る町なんだな」


「そうですね。ロッペンハイマーとは雰囲気が随分と違いますよね? 人も多いというか様々な種族の人がいます」


「ワーグハウゼンは職人の町だからね、武具だけじゃ無く仕立て屋とか靴屋、本屋、鍵屋あと工芸屋など色々あるんだ。」


「私また今度ゆっくり見に来たいですね」


「ちなみに前にお前が住んでいたカルロー村はこの町とロッペンハイマーの間にあったんだ。まあ少しロッペンハイマー寄りだけどね」


って事はカルロー村を新たに作っちゃえばいいじゃない? そうすれば近いんでいつでもここへ遊びに来れるわね

 まずアタシ達は町の広場で依頼主に会うって事になっているんだけど……

 依頼主さんは確か亜人の女性で目印に赤いバンダナを着けてくれているってセシリーが言ってたわね。


 アレ? 角刈りで強面のオッサンが赤いバンダナをねじりハチマキみたいにして頭に巻いているんだけど……いや彼は関係ないでしょう、だって依頼主はリノエ・ゲーヴォルドって女性だし


「見かけねえ顔だなオイ」


「いやぁ実は私達人を探してましてエヘヘ」


「おう奇遇だなオレもなんだよ! 隣町の連中がウチの近所で起こっている怪奇現象について調べに来るらしいんだがなかなか来やがらなくてよう。」


「えっともしかしてリノエさんの旦那さんとか

 ですか?」


「おうこのオレ様がリノエだぜ!

 そうかお前達が調査しに来た連中なんだな」


 ん〜っ? コレは一体どういう事かしら?


「アレっじゃギルドに依頼して来たっていう女性は一体どこの誰なんだ?」


「おうそりゃ弟子のターニャだ。オレ様が忙しくて行けなかったんで代わりに行かせたんだよ」


「弟子?」


「おうよウチの工房の弟子数はここいらではダントツだぜ!」


「とっ……とりあえず現場まで歩きながら話しましょうか。」


 一度町を出て、現場まで歩く事40分ほど、リノエさんの話を色々聞いてみた。

 ちなみにこのリノエさんが営んでいる工芸屋はこの町では人気店らしく弟子も沢山いるそうだ。

 話を聞いたメアリーが店に行きたがったが残念ながら今回は別の用事で来ているので却下した。

 まぁ確かにこの角刈り親父がどんな物を作っているのか見てみたい気はするわね〜


「お嬢ちゃん安心しな! 今から行く家の一階でも弟子が数人修行に来ているから用事が済んでから見学に来るといい」


「わぁ家の中でも作っているんですね」


 「ああ交代で作業していたんだが夜、近所の空き家から笑い声が聞こえるたり、幽霊や人魂が見えたりするからって弟子がどんどん辞めていって困っているんだよ」


「なるほど、それでは作業に支障がでちゃいますね

 リノエさん自身はまだ幽霊の類を目撃した事はないんですよね?」


「幽霊だあ、そんな奴いたら人様の家でフラフラしてねえでしっかり働けってオレ様が説教してやるよ」


 へえーっ! なかなかいい事言うじゃないこの角刈りオヤジは?



 畑の向こうにようやくリノエさん達の村が見えてきた。細い脇道の左右に広がる畑はしばらく人の手が加えられていないのが一目でわかる。理由は分からないけどおそらくずっと放置されているんでしょうね〜


「オイ着いたぞ!」


 どうやら目的地に着いたらしいわ

 何かしら? 周りには誰もいないのにものすごい視線を感じるしこの湿っぽく暗く冷たいような独特の雰囲気は何だろう、やっぱり近くに幽霊とかがいるのかしら?

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