第102話 現状
俺とサヨはとりえあえず店を出た。もしかすると、サヨがオーナーと呼んでいた女性型人造人間が戻ってくるかもしれない……一刻も早く逃げなければならない。
といっても……逃げるといってもどこへ逃げればいいのだろう?
「ちょっと、アンタ達!」
困惑していた矢先、ムツミの声が聞こえてきた。振り返ると、明らかに不機嫌そうなムツミが俺とサヨを見ていた。
「ムツミ……えっと……なんか、ごめん……」
俺が謝ろうとした矢先、バチンとムツミは俺の頭を叩いた。
「……アンタ、面倒なことしてくれたわね。まったく……っていうか、玄関で人造人間がバラバラになってたけど……アンタがやったの?」
怪訝そうな顔で、ムツミは俺のことを睨んでくる。
「え? あー……いや、よくわからないんだけど、気付いたらあんな感じになってたんだよね……」
「はぁ? ……まぁ、いいわ。どうせ、アンタにはあんなことできないでしょうし。とにかく、そっちが、アンタの旅を道連れなんでしょ?」
ムツミはそう言ってサヨのことを指差す。
「う、うん……そうだ」
「……とりあえず、ここを出るわよ。あのオーナーのことだし、自分の商品が勝手に持ち出されるのを黙ったままでいるとは思わないけど……ほら、来なさい」
そう言って、ムツミは怒ったままで歩いていってしまう。
「おい。ナオヤ、あれは誰だ?」
サヨはようやく聞けたといわんばかりに、俺にそう訊ねてきた。
「あー……ここに来てから知り合ったムツミ。俺がここに来てから色々と教えてくれてさ」
「そうか……人形モドキは、どうしたんだ?」
「え? あ……クロミナとは……別れた」
「別れた? アイツに何かあったのか?」
不安そうな顔で俺を見るサヨ。
「……クロトと、会ったんだ」
「……あのデカブツと? アイツがこっちに来ているっていうのか?」
サヨは困惑した様子だった。
サヨと出会うまでに色々と状況が変わってしまった。しかし、一番変わってしまったのは――
「というか、お前……さっき、普通にあの人造人間に叩かれてたよな?」
「え? あ、うん……それがどうかした?」
俺がそう言うとサヨは少し悲しそうな顔で俺を見る。
「その時、お前、痛いとかそういう反応もしなかったよな?」
そう言われて俺は気付いてしまった。
サヨと別れてから一番変わったこと。それは――
「……うん。俺、自分が人間じゃなくて、人造人間だってこと、知ったんだ」
俺がそう言うと、サヨは悲しそうに視線を落とす。
「ちょっと! 早く来なさい!」
俺たちがそんな会話をしていると、ムツミが俺たちを呼んでくる。
「とにかく……話したいことは色々あるから、後で話すよ」
「あ、あぁ……そうだな」
俺とサヨは慌ててムツミの方へ駆けていったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます