三歩

 俺はクローゼットに入り、王都、城にある謁見の間へと侵入した。

 謁見の間ではちょうど、騎士の一人がステイシーに報告をしているところだった。

 ステイシー以下テリーや獣人の側近たちは俺を見ると目を見開いた。


「あなたは……」

「やあ、帰ってきたよ、ステイシー」

「じゃあ、街を襲っているのも」

「そうだよ、俺だ。今日は宣戦布告に来た。いいか、俺は王都を落とす。すべての人間を奴隷にしてやる。数か月前話したよな? あの計画を実行するんだ」


 ステイシーは立ち上がり叫んだ。


「なりません! そんなことは私が許しません」

「お前が許さなくてももう計画は実行に移っている」

「なんだと!」


 テリーが叫んだ。


「お前は獣人だから別にいいだろ。人間がどうなったってよ。とにかく、俺はお前らに復讐に来た。覚悟しろよ」


 バリスタをとりだす。

 騎士たちは王の前にしゃしゃり出てきた。射線に王が入ると困るんだよ。俺はアームで地面をつかみ体を持ち上げると上方から奴らを見下ろした。


「じゃあな馬鹿ども」


 バリスタが矢を発射する、矢は彼らが構えた盾を突き破り、鎧を突き破って貫通する。


「そんな、バカな……」

「なめんなクズ」


 俺は地に足をつけて歩き出す。ステイシーは王の椅子で小さくなっていた。


「ステイシー、どうして俺を裏切った?」

「あなたが……あなたが危険だからです」

「だからって恩人を水に沈めちゃだめだよな?」


 俺はステイシーの頭をつかんだ。

 ステイシーはボロボロと涙をこぼしながら俺を見つめている、いや、目を閉じられないでいる。


 叫び声が聞こえてくる。

 すでに城の近くまで奴隷兵士たちが近づいてきているようだ。


「お前の国が死ぬ姿を見せてやる」


 俺はステイシーをアームでつかむと、窓から外に飛び降り、壁をつかんで城の一番高いところまで彼女を連れて行った。


「いい眺めだろ! あ! お前の国がつぶれるのは、お前が恩をあだで返したからだ。裏切ったからだ!」


 風が吹く、俺はステイシーを放した。

 彼女は必死でその細い手を伸ばして、俺の服に縋りついた。


「きゃああああああああ!!!!」

「選択しろステイシー! 俺を王と認めるか、王として俺に歯向かうか!」


 ステイシーは俺を見上げて、しばらく歯を食いしばっていたが、最後には肯いた。


「あなたを王として認めます! だから助けて!」


 生(せい)にしがみつく子供だ。

 ただのガキだ。

 こんなのが王だなんて反吐が出る。

 俺は彼女をアームでつかみ上げ、謁見の間へと戻った。

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