王の救出
塔の周りに何らかの結界があると思ったのだが関係ないようだった。『王のいる塔』という転移先には一人の少女がいる殺風景な牢があっただけだ。
いきなりクローゼットが現れ、俺がでてきたものだから、少女は驚愕して部屋の隅へとにじり去ってしまった。
「誰!?」
「ユキハル。助けに来た」
「名前を聞いているのではないです。あなたは怪しいです」
「ここから出たくないのか? 生活の保証はしてやる。側近たちもいるぞ」
少女はその言葉を聞くと、少し興味を持ったようだった。
「本当ですか?」
「ああ」
俺はクローゼットから足を踏み出した、瞬間警報が鳴り響いた。
「時間がないぞ、来るなら来い」
少女は少し戸惑っているようだったが、最終的には意を決して頷いた。
「いきます。ただ、この鎖が」
「ああ」
俺は武器をとりだした。少女は悲鳴を上げた。
「傷つけるつもりはない。その鎖を外すだけだ」
バリスタで構わないだろう。発射するといとも簡単に鎖はちぎれた。
「ほら、立て」
俺はそう言って、少女をクローゼットの中に入れた。さて、俺も入るか、というところで、目の前にマップが映し出され、見慣れない緑色のマークが現れた。ものすごい速度でこちらにやって来る。そもそもこのマップは探知機がなければ見れなかったはずだが、スマホがその役割を果たしているのだろうか。わからない。
今はとにかく、そのマークが気になった。
「おい、先にいけ」
「え?」
困惑する少女の背中を押して、暗闇の中に入れた。
スマホが鳴る。
それどころではないが、カマエルを無視するとナオミが傷ついてしまう可能性がある。スマホを耳に当てる。
「クエスト完了おめでとう。『創造ポイント』を増やしておいたよ」
「そうか、今それどころじゃないんだが」
「緑色のマークのことだろう。気付いていると思うがスマホが索敵機がわりになっているからね。君の視界にあらわれるんだ。で、緑のマークだけど、それは君と同じ転移者だよ」
「俺以外に転移者がいるのか?」
「うん」
「仲間なのか?」
尋ねるとカマエルはしばらく沈黙して、そして、
「敵だよ、昔からのね」
「どういう意味だ」
「見てみればわかる。しっかり準備して行くといい。君が倒さなければいけない敵だよ」
じゃあね、そう言ってカマエルは電話を切った。
創造ポイントを見てみるとたしかに大量に増えていた。俺は『アーム』を選択し、体に取り付ける。まるでスパイダーマン2に出てくる科学者みたいな風貌になってしまったが仕方ない。いくら不死身と言っても壁は走れない。俺はスーパーマンじゃないからな。
魔法兵器で壁を破壊すると、アームを使って緑のマークがやってくる方向へ壁を伝っていった。走ってくるのは作業着姿の男。
降りるのが面倒になったので、俺はやつめがけて飛び、体ごとぶつける戦法を取った。
しかし、やつは俺に気づき、避けた。
首が折れる。
再生する。
俺は立ち上がり、緑色のマークの男と対峙する。
どっと殺気があふれるのを感じる。今すぐに殺してやりたい。
俺の目の前にいるのは塚原。俺に虫をくわせるのが大好きだった男だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます