ゲームの結果
30分後、少女はいくつかの金品を持って離れにやってきた。
「終わりだ。お前らは見逃してやる。約束通り特級ポーションをやろう。教会に行け。白金貨一枚で売ってくれる」
「白金貨一枚! そんな暴利な!」
「この家を売ればそのくらい手に入るだろう。こいつに持ってこさせたのはお前らのこれからの生活費だ。せいぜい買い叩かれないように気をつけるんだな」
母娘は絶望の表情で俺を見上げていた。少女が持ってこれたのはせいぜい金貨一枚程度。金庫は運べなかったのだ。
◇
教会に戻る途中、セレナは浮かない顔をしていた。
「何だ」
「何もあそこまでする必要はなかったんじゃないか? あの人たちに罪はないだろう」
俺はセレナをぼうっと見ると、言った。
「獣人たちはなにか罪を犯したのか? この村の民は?」
「それは……」
「首謀者はもちろん悪い。ただ、傍観者だって同罪だ。もっと悪いかもしれない」
俺はいじめられていたときのことを思い出していた。殴られ、蹴られ、カッターナイフで文字を刻まれるあいだ、クラスメイトも、教師も、ただ、現場を見ないふりしてきた。俺は助ける「選択」をした。その結果、いじめられるようになった。
それから「選択」を止めた。傍観者に成り下がった。
でも今は違う。
「俺は選択する。選択させる。傍観者なんてどこにもいない。すべての人間が、種族が、選択しなければならない」
ぼうっとした目に焦点が合う。俺はセレナをじっと見据える。
「正義ってのはそういうことだ。正しくなければ意味がない。選択を間違えれば、それは正義ではない。お前は正義か? セレナ」
セレナはぐっと黙った。が、強い精神力を持っているのか、俺の恐怖に打ち勝ったのか、彼女は口を開いた。
「私は私の正しいと思った道を行く。たとえ犠牲を伴っても」
「いいねえ。羨ましい限りだ」
俺はあるき出した。
◇
家というかダンジョンに戻ると、俺はセレナに言った。
「これで真の国王を助けられることがわかっただろ」
彼女は肯いた。
「武器も見たいか」
「いや、いい。領主の家を襲撃できたんだ。相当な実力があることはわかった」
「ああそう。じゃあ行くか」
セレナは身構えた。
「え! もう?」
「早いほうがいいだろ」
「それはそうだが。早すぎないか? 心の準備が……」
「じゃあ、何人生きてるのかだけ見に行くか」
俺はほとんど興味がなかったのでぼーっとクローゼットの行き先を見ていたのだが、そこに城の塔や地下牢という場所が無い。いや、あることにはあるのだが創造ポイントが必要だ。それに地下牢の鍵というアイテムまで買わなければならない。
幸いたくさん殺したのでポイントは有り余っている。全く躊躇なくそれらのボタンをして、通路を生成、鍵も作り出した。残りのポイントで特級ポーションを作り、部屋を増設した。助けろというのだから、匿うことも前提としているのだろう。
LEVELはすでに40を超えていた。カマエルは電話をよこさないが。
「地下牢が先だな、人数を確認したい」
俺はそう言って、クローゼットに入った。
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