ゲームの結果

 30分後、少女はいくつかの金品を持って離れにやってきた。


「終わりだ。お前らは見逃してやる。約束通り特級ポーションをやろう。教会に行け。白金貨一枚で売ってくれる」

「白金貨一枚! そんな暴利な!」

「この家を売ればそのくらい手に入るだろう。こいつに持ってこさせたのはお前らのこれからの生活費だ。せいぜい買い叩かれないように気をつけるんだな」


 母娘は絶望の表情で俺を見上げていた。少女が持ってこれたのはせいぜい金貨一枚程度。金庫は運べなかったのだ。



 教会に戻る途中、セレナは浮かない顔をしていた。


「何だ」

「何もあそこまでする必要はなかったんじゃないか? あの人たちに罪はないだろう」


 俺はセレナをぼうっと見ると、言った。


「獣人たちはなにか罪を犯したのか? この村の民は?」

「それは……」

「首謀者はもちろん悪い。ただ、傍観者だって同罪だ。もっと悪いかもしれない」


 俺はいじめられていたときのことを思い出していた。殴られ、蹴られ、カッターナイフで文字を刻まれるあいだ、クラスメイトも、教師も、ただ、現場を見ないふりしてきた。俺は助ける「選択」をした。その結果、いじめられるようになった。

 それから「選択」を止めた。傍観者に成り下がった。

 でも今は違う。


「俺は選択する。選択させる。傍観者なんてどこにもいない。すべての人間が、種族が、選択しなければならない」


 ぼうっとした目に焦点が合う。俺はセレナをじっと見据える。


「正義ってのはそういうことだ。正しくなければ意味がない。選択を間違えれば、それは正義ではない。お前は正義か? セレナ」


 セレナはぐっと黙った。が、強い精神力を持っているのか、俺の恐怖に打ち勝ったのか、彼女は口を開いた。


「私は私の正しいと思った道を行く。たとえ犠牲を伴っても」

「いいねえ。羨ましい限りだ」


 俺はあるき出した。



 家というかダンジョンに戻ると、俺はセレナに言った。


「これで真の国王を助けられることがわかっただろ」


 彼女は肯いた。


「武器も見たいか」

「いや、いい。領主の家を襲撃できたんだ。相当な実力があることはわかった」

「ああそう。じゃあ行くか」


 セレナは身構えた。


「え! もう?」

「早いほうがいいだろ」

「それはそうだが。早すぎないか? 心の準備が……」

「じゃあ、何人生きてるのかだけ見に行くか」


 俺はほとんど興味がなかったのでぼーっとクローゼットの行き先を見ていたのだが、そこに城の塔や地下牢という場所が無い。いや、あることにはあるのだが創造ポイントが必要だ。それに地下牢の鍵というアイテムまで買わなければならない。


 幸いたくさん殺したのでポイントは有り余っている。全く躊躇なくそれらのボタンをして、通路を生成、鍵も作り出した。残りのポイントで特級ポーションを作り、部屋を増設した。助けろというのだから、匿うことも前提としているのだろう。


 LEVELはすでに40を超えていた。カマエルは電話をよこさないが。


「地下牢が先だな、人数を確認したい」


 俺はそう言って、クローゼットに入った。

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