匣の少女
少女を箱から出すと、箱は自然に消えた。
彼女を俺のベッドに寝かせると、しょうがない、ポイントを使ってベッドを一階に作り、そこまでまた少女を運んだ。
少女はボロを着ていた。おそらく奴隷だったのだろう。手首には縄か何かで縛られた跡があった。
一向に目覚める気配がないので、俺は二階に戻ってPCをの画面を見た。
家を移動できると言っていたな。
確かに『武器』や『防御』の下に『移動』のボタンが現れていた。
確かめてみようとボタンにマウスポインタをおいた瞬間、画面が勝手にマップに切り替わり、何やら大量の黄色いマークが門の前に現れた。
窓を開けて外をみると、マーラやレイの他に獣人たちが集っているのが見える。
「ユキハル! 風呂に入りに来たにゃ!」
俺はため息をついて窓を閉めると家を出た。彼女たちが風呂に入るのはいいのだが、毛が詰まる、泡が飛び散る、そして裸のまま俺の前に現れるなど、弊害が多発する。まあいいんだけど。
門を開けるとマーラがまた
「風呂に入りに来たにゃ」
といって
「全員にゃ」
と続けた。
俺の家の風呂はそんなにでかくない。順番で入ることはできるだろうが湯船が毛で満たされてしまう。
しかし指示だ。従おう。
どうにかして。
カマエルは家が移転できると言ったな。
では風呂は?
「ちょっとまっててください」
俺は家に戻るとPCをつける。
まず外に小屋を作成、壁で内部を2つに区切り、それぞれに風呂を作成する。その後拡張をつかって湯船を広くする。シャワーもたくさんつけてシャンプーだのなんだの備品にある項目を使ったら10000ポイントはすぐに消えた。
外に出てマーラたちに言う。
「おまたせしました。この小屋がお風呂です」
「すごいにゃ。どうやってやったにゃ!」
「まあ、あの魔法みたいなものです」
「ところでなんで2つに別れてるにゃ」
「……男性用と女性用です」
「そんなのいらないにゃ。でかいほうがいいにゃ」
「……はい」
要望通りに内部を一つにして風呂も一つにする。
「どうぞ」
「ありがとにゃ」
ドヤドヤと30人くらいの獣人が小屋に入っていく。
ところがマーラとレイは中にはいっていかない。
「どうかしましたか?」
「私達はユキハルの家のに入るにゃ」
「なんでですか?」
「なんでもきゅ」
「なんでもにゃ」
絶対に譲らないという堅い意志がみうけられる。
俺は盛大に溜息をついて。
「わかりました。いいですよ」
そういった。
二人はウキウキとした足取りで俺についてくる。
「あ、それとあの小屋はマーラさんたちの村に移転させますね」
「そんな事もできるのかにゃ」
「すごいきゅ」
「それと俺はここから引っ越します」
そういった瞬間二人は立ち止まった。
「どこに行くにゃ!! 行っちゃだめにゃ!!」
「見捨てないできゅ!!」
ふたりとも半泣きで俺にすがってくる。
「この森からは出ていきませんよ。すぐそばです」
そう言うと安堵のため息をついた。
「まだ全然お礼もできてにゃいのにどこかに行くにゃんていうからびっくりしたにゃ」
「お礼なんていいですよ」
「だめきゅ」
そう言いながら二人はしなだれかかってきた。
「わたしたち、ユキハルの妻になりたいにゃ。精一杯ご奉仕するにゃ」
「他にお礼の方法が見つからないきゅ」
「あの、魔石をくれるとかでもいいのですけど」
「他に方法はないにゃ!」
「ないきゅ!」
よわったなぁ。
俺は家の扉を開けた。
……ベッドで眠っていた少女が起き上がっていた。
俺はマーラとレイをみた。二人は俺を睨んでいた。いつもより低い声で二人は言う。
「ユキハル。奴隷買ったのかきゅ?」
「私達に手も出さにゃいのにかにゃ」
「いや、彼女は俺が買ったわけじゃなくて……」
すると、少女は頭を下げて言った。
「おかえりなさいませ、ユキハル様。私は性奴隷です。どんなことでもいたします。何なりとご命令ください」
俺は獣人二人にひっかかれた。
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