閑話 妻への義務(アナルド視点)

「そういえば、軍でクーデターが起きたようです」

「はぁあ、ん…っな、なんっ」


妻の淫らな声を聞きながら、腰を動かす。

彼女の中はいつも熱くて我を忘れてしまう。溺れるとはこういうことを言うのだろう。

だから思わず先に体を繋げてしまったが、そういえば話があったことを思い出した。

待ちに待った連絡というものではないが、まあ妥当なところだなという時期に連絡が来たのが昼の話だ。手紙の内容を読んで、すぐに動こうと思ったが、結局夜になってもアナルドはここにいる。

欲を2,3度は吐き出さなければ考えもまとまらないのだから、なんとも妻の体というのは魔性だ。


「明日の朝には帝都に戻ります」


明日といってももう日付は変わっているので、今日になるのか。

バイレッタは一日会議の筈だ。テランザムの町長をはじめ町の主要人物たちの訴状を聞いて対策を話し合う。これまでの視察の結果では十分に彼らを説得できると思われた。

資料づくりのための綿密な下準備を真近くで見ていたアナルドは感心するばかりだ。ぜひとも部下に欲しいと思ってしまった。


自分がいなくても彼女は困らないだろうが。突然夫が姿を消したら心配するかもしれない。もしかしたら何も思わないかもしれないが、数少ない友人のジョアンが妻には出かける前に行先を告げていくものだと話していた。自分は夫になったのだから、妻に伝えておくのは義務ということだろう。


「なっ、あぁ、んン、い、今…言うっ、のっ…」


向かい合わせで体を重ねているのでバイレッタの表情はよく見える。快楽に落ちている彼女の顔は普段の取り澄ました顔とは別人だ。妖艶で美しく、可愛い。

だが、今はそこに怒りのような色も見えてアナルドは大きく腰を奥に押し付けた。


「あああ…っ」

「申し訳ありません、貴女をおろそかにしたつもりはないのですが…はっ、貴女はココが好きですね。とても気持ちがいいんでしょう? 何度でも期待に応えて差し上げますから」


ぐりぐりと抉るように腰を動かして、彼女を何度も喘がせた。

甘やかな声を聞いているだけで、誘われているのだと勘違いしそうになる。欲してくれているのは間違いないだろうが。


「貴女に甘く強請られて俺の理性はすっかり壊れてしまいましたが、淫らな妻を満たすのも手がかかる」

「貴方が…変えたのっ…ああン」

「頑固な妻が俺のせいで変わったというのなら、嬉しいですね。そのまま悦楽に溺れてください」


懇願するとともに、何度も激しく腰を動かす。そうして、自身を放つとともに、大事なことを告げるのを忘れていたことを思い出した。


「どうやら休暇は終りのようです。しばらくは会えないでしょう。賭けの結果を楽しみにしていますよ」


バイレッタの薄い腹の上に直接口づけながら、きちんと妻に伝えられたことにアナルドは満足するのだった。

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