第22話 模様替え

 ※21話より少し前のお話です。



「はい、お茶」

「あんがとさん」


 冷蔵庫からお茶を持ってきて手渡す。


 ごく、ごく、ごく。


「あー、生き返るわー」

「おおげさだよ」


 真澄の物言いに苦笑いする。


「今日は暑かったから、バスケは結構きつかったんよ。ほんとに」 

「確かに、いつもより暑いよね」


 4月も半ばを過ぎて、ときどきこういう風に暑い日が訪れることも少なくない。

 さすがに、まだエアコンをつける程ではないけど。


「あ、これ……」

「あ、うん」


 飲み終えたコップを僕に渡してくる。僕の部屋は、基本的に一人仕様なので、誰かを部屋に招いたときには少し不便だ。といっても、付き合い始めてから、部屋に来るのはもっぱら真澄だけなのだけど。


 コップを机に置いておく。少し不便かもしれないな。


「模様替え、しようかな」

「模様替え?どうしたん?」

「いや。せっかくだから、真澄が来た時にもっとゆっくりできるようにしたいなって」


 今は、真澄は僕のベッドにちょこんと座っている。こういう感じで横に居られるのもいいけど、もう少しゆったりした感じにした方がいいかもしれない。


「そんな今更気を遣わんでええよ。コウはほんとに真面目なんやから」


 真澄はそう言ってくれるけど、せっかくだから、もっと一緒にゆっくりくつろげる空間にしたい。


「そういってもね。とりあえず、ちゃぶ台と座布団くらいは用意してあげたいし」

「ほんとしょうがないんやから。じゃあ、一緒に探そうか」


 スマホだと少し二人で見るには狭いので、PCを起動して、二人で通販サイトを一緒に見る。椅子は一人分しかないので、僕の後ろから真澄が見る格好だ。


 家具などで有名な二〇リのページを見ていると、真澄が声を上げた。


「あ、これなんかどうや?」


 真澄が指差す先を見ると、そこには、いかにも漫画とかで見るような、「ちゃぶ台でございます」と言わんばかりの真ん丸で低いちゃぶ台があった。和柄の座布団もセットになっている。


「うん。結構いいかもね」


 7000円なら、お小遣いで足りる。それに、色合いが古めかしくて、落ち着いているのもいい感じだ。


「やろ?なんか、色も落ち着いて居て味があるっちゅうか」


 それはわかるけど……。


「真澄って好みが渋いっていうか、通な感じだよね」

「通ってなんやねん」


 チョップされた。


「前に真澄の部屋に行ったときも、ファンシーなぬいぐるみとか置いてなかったし」


 もちろん、鏡や化粧台はあって、やっぱり女の子なんだなあ、と思ったのだけど。


「うちはどうせ女の子らしくないですから」


 わざとらしくいじけてみせる真澄。


「いや、そんなこと言ってないって。真澄が女の子なことはよくわかってるし」


 付き合い始めてからのあれこれを思い出しながら、笑ってそう言う。


「コウのエッチ」


 ジト目で見られる。しかも、わざとらしく胸を隠す仕草まで。


「いや、エッチって……。まあいいや。じゃあ、これ、注文するね」


 ポチっとクリックして、カートに入れて注文する。まだクレジットカードは無いので、コンビニ払いにする。


「お疲れ様」

「いえいえ」


 そんなことを言い合う。そうだ。せっかくだし。


「ねえ。せっかくだから、二人で過ごしやすいように、徹底的に模様替えしない?」


 これからも二人でこの部屋で過ごすことは増えるだろうし、徹底的に改装したくなってきた。


「きゅ、急に本格的になってきよったね。じゃあ、お言葉に甘えて……」


 そうして、その日は、模様替えに費やされたのだった。

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